愛煙家の聖地「スナック」に押し寄せる禁煙の波 禁煙化に踏み切ったスナックに聞いてみた

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「表の看板や、扉の前にも禁煙マークは出しているんだけど、やっぱりスナックはタバコが吸えて当然と思って来られるお客様も多いわよね。これまでも、無意識にタバコに火をつけるお客様がいたわ」とちなつママ。

「でも、『うちは禁煙なのでタバコは外の灰皿でお願いします』と言うと、みんな素直に応じてくれるわね。それ以降、初めて来られる方には、『うちは禁煙ですけどいいですか?』って声かけるようにしているの。禁煙と聞いて帰るお客様もたまにいるけど、最近は、禁煙を目当てに来られる方も増えています」

もともとぜん息でタバコが苦手だったというちなつママ(編集部撮影)

実際、この日たまたま訪れたという客もぜん息持ちで、タバコは苦手だという。タバコの煙がいっさい漂っていない「Natsu夏」をすっかり気に入ったらしく、お酒を飲みながら気持ちよさそうに持ち歌を披露していた。

「以前は、扉の前に灰皿を置いて、タバコを吸いたい人は扉の外で吸ってもらっていたわ。でも、吸った後の残り香や煙がどうしても店内に入ってきてしまう。それで、令和に改元したタイミングで、店外の灰皿も撤去したの。

年配のお客様の中には時折クレームをいう人もいるけど、今では、女性や若い団体客などの常連が増えたわね。1人で来る女性客も多いし、出張の度に顔を出してくれるお客様、歌が好きで集まる常連もいるわ」(ちなつママ)

3年前に禁煙スナックに切り替えた

一方、長年喫煙可だったのを禁煙に切り替えた店もある。それが、花街の風情が残る東京・湯島天神下、大通りに面したビルの地下にあるのは、今年で37年目となる老舗店「スナック もしも…」である。

扉を開けると、カウンターと半円型に設置されたテーブル席が広がり、昭和の雰囲気を感じさせる。フロアでは、白いエプロンを身にまとった女性スタッフがお客様の歌に合わせ手拍子をし、楽しく談笑している。まさに、アットホームな雰囲気だ。

東京・湯島にある「スナック もしも…」(編集部撮影)

ある理由をきっかけに3年前に全面禁煙へと移行。タバコを吸いたい人は、外に出て、階段横に設置された灰皿で吸ってもらっているそうだ。では、禁煙に踏み切った理由は何だったのだろうか。仁子ママに話を聞いた。

「以前は、お客様も心おきなくタバコを吸っていたの。でもここは地下でしょ。

時々、部屋の天井一面にタバコ雲ができるくらい煙が蔓延して、息苦しく感じられることもあって。そんなことが影響してか3年ほど前に、心筋梗塞で倒れてしまった。2度のカテーテル手術を経て退院できたんだけど、いろいろ考えて全面禁煙にしようと決意したの」

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