あるママに「身体によくないんじゃないの?」と聞くと、「そうねえ。身体にはよくないし、若いスタッフはタバコが原因で辞めてしまうこともあるわね。でもお客様は、タバコが吸いたくてここに来るじゃない。楽しみを取り上げるみたいで、なかなか禁煙にはできないわ」とのこと。
スタッフやタバコを吸わない客にとっては劣悪な環境であるものの、今いる常連をむげにすることもできない。ママの苦悩がうかがえる一言である。禁煙への圧力と、売り上げや客足への影響。その狭間で、揺れている店舗は多いのではないだろうか。
ドアを開けてもあのにおいがしない!
こうした中、「禁煙」をうたう珍しいスナックがあると聞き、さっそくサラリーマンの聖地、新橋へ向かった。
駅から徒歩3分程の雑居ビル2階にその禁煙スナック「Natsu夏」はあった。
扉には禁煙マークのシールが貼られ、その横には、「飲み放題&歌い放題3時間(金曜2時間)3000円」と明記された料金ボードが。明朗会計、非常にリーズナブルなスナックである。扉を開けると、スナック特有の壁に染み付いたヤニ臭が一切しない、クリーンスナックだ。
菓子が入った瓶や、烏龍酎、コーヒー酎、むぎ酎などの珍しい酒瓶が並ぶカウンターに腰かけると、18時という早い時間にもかかわらず、先客が気持ちよく演歌を歌いはじめた。常連に愛されているのがわかる。
ママのちなつさんに、なぜ新橋という場で禁煙スナックをはじめたのか聞いてみた。
「禁煙スナックNatsu夏は、2011年1月にオープンし、今年で8年目。きっかけは、知人がオープンするワインバーの隣が開いていて、『隣同士でやらない?』と誘われたからなの。
OLを辞める決心をして、内装工の現場に立ち入ったとき、空気がこもっていている店内を見て『これはまずい!』と思ったわ。私が喘息だったこともあり、思い切って禁煙のお店にしてみたのよ」。
酔っ払ったサラリーマンの多い新橋。タバコを吸う人も多いだろう。はたして、禁煙スナックは成立するのだろうか。
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