――夫が昇進すれば、奥さんのメンツが立つからではなく……?
許:気の強い奥さんを持つことは、気の弱いだんなさんにはよいと思いますよ。でも迷惑だと感じる人もいるでしょう。それに夫への要求が行き過ぎて、夫がプレッシャーで潰れてしまうこともあります。
たとえばこんな話がありました。妻は中央テレビの女性記者で、仕事で大企業の社長などを取材する機会がとても多く、そのため、なぜ自分の夫はあんなふうにうだつが上がらないんだろうと考えるようになったそうです。そして取材を通じて知り合った社長に頼みこんで、夫に部長の地位を用意してもらいました。しかし、妻からのプレッシャーに耐えられなかった夫は、結局、その仕事でもうまくいかなったということです。
――奥さんのプレッシャーや要求が強すぎるという話は、中国ではよく聞きますね。
許:今の社会で暮らしていくには、経済的なプレッシャーも大きいです。だから奥さんは夫がもっと強くなって、稼いできたら、生活が楽になるだろうと考えるのでしょう。
妻:それに中国の教育は競争がとても激しいです。小さいときからよい成績でよい学校に進むことを第一の目的とします。テストでよい点数をとることがすべてで、卒業後、社会に出てからは給料の高い仕事に就くことがいちばんです。そして自分の稼ぎよりもよい夫と結婚することが、家庭の幸福につながると考えます。
またそれだけでなく、中国の伝統文化が失われてもう100年になるため、女性はいかにして女性であるべきか、わからなくなっていると思うのです。それで最近、「聖賢教育で命運を変える」というDVDが流行っています。
――女性への啓蒙ビデオですか?
許:一種の道徳教育、正しい人生教育みたいなものです。女性に限ったものではありません。中国は今、道徳も信仰も伝統も失い、このままではだめになるというという危機感があります。それで中央テレビのキャスターらが、全国各地でシンポジウムを行いました。それをまとめたドキュメンタリーがこのDVDです。ネットショップのタオバオで安く買えますよ。
妻:『弟子規』(孔子の教えをもとにした儒教的な道徳啓蒙書)を教科書に、父母や友人に対してどうあるべきかということを説いていくのです。その中に、女性とは本来どうあるべきかという話もあります。実際、改心した人たちのエピソードや感想があって、ものすごく参考になります。
――たとえば?
許:ある女性が家庭を顧みず子供をほったらかしてカネ稼ぎに精を出していたら、子供が精神的な病気になってしまい、せっかく稼いだカネもその治療に全部使うことになって、無駄になったといった話があったりする。
――それで中国の女性は改心する?
許:改心する人もいる。
妻:『弟子規』には、われわれがどうあるべきかということが詰まっています。それは学校でも家庭でも教えないことですが、絶対に学ぶべきだと思います。
許:本と今日の取材は関係ないだろ。日本人と中国人の奥さんの違いについて話をしているんだから。
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