勝者はれいわとN国?笑顔なき「参院選通信簿」 ポスト安倍レースは岸田氏失速、菅氏浮上

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両党が政党要件を満たしたことで、次回衆院選の党首討論会には山本、立花両党首も参加することになる。メインイベントとなるのは公示前日の開催が慣例の日本記者クラブ主催の党首討論会だ。

今回は既成7党首(社民は幹事長)が壇上に並んだが、次回は山本、立花両氏の席も設けられるはずだ。国会質問で安倍首相に「アッキード事件」と言い放った山本氏と、NHK批判一本槍の立花氏の参戦が、これまでの予定調和の党首討論をかき乱すことは間違いなく、記者クラブ事務局やNHKも戸惑いを隠せない。

「ポスト安倍レース」にも異変

れいわ以外、既成各党の街頭演説も盛り上がりに欠けた。安倍首相の街頭演説は組織的動員で聴衆は多かったが、「親安倍」と「反安倍」の罵り合いも目立った。ただ、「大手メディアの忖度(そんたく)」(民放関係者)で、その場面もほとんど放映されなかった。

選挙戦の最中には、ジャニー喜多川氏の死去やジャニーズ事務所に対する公正取引委員会の注意、吉本興業の大混乱や京都アニメーションの放火殺人事件などが相次ぎ、「選挙期間中の選挙報道量は従来と比べて大幅に減り、結果的に与党を利した」(選挙アナリスト)との分析もある。

「ポスト安倍レース」にも異変が生じている。岸田文雄政調会長の率いる岸田派は、派最高顧問の重鎮も含め4人の現職が落選。「岸田派の独り負け」(自民幹部)で岸田氏の指導力を問う声が噴出し、「ポスト安倍どころではなくなった」(岸田派幹部)との悲鳴も漏れる。「党内での村八分」(自民長老)を強いられている石破茂元幹事長も、得意の地方巡業の機会が限定され、選挙戦での存在感が薄れた。

「令和おじさん」として人気急上昇の菅官房長官は、官邸を留守にして全国を駆け巡り、「ポスト安倍の地歩を固めた」(閣僚経験者)ともみえる。

「メディア対応も含めて、負けない選挙を徹底した」(自民選対)とされる首相らのしたたかな戦略が功を奏し、余裕の首相は7月24日午後から夏休みに入った。8月1日召集の臨時国会や広島(6日)長崎(9日)訪問をはさんで、8月10日からのお盆休みは地元山口での墓参と別荘でのゴルフ三昧となる予定だというが、その後は日米貿易交渉や日ロ交渉、対北朝鮮外交、日韓外交と難問が目白押しだ。そして、秋の重要課題となる国会での改憲論議の行方も不透明だ。

今回のれいわの台頭は、「欧米で吹き荒れる左派ポピュリズムに通底する」(政治学者)との見方がある。凡戦とされる参院選だったが、「随所に変革への萌芽があった」(閣僚経験者)との指摘も多い。その小さな芽が次の衆院選や3年後の参院選で大きく芽吹く可能性も秘めている。衆参選挙を経た3年後の夏に、「振り返ればあの時がターニングポイントだった」となる可能性も否定できない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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