日経平均株価は「重要な岐路」に差し掛かった アベノミクス相場は継続か、それとも終了か

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ひとつは半導体受託生産の世界最大手、台湾セミコンダクタ(TSMC)が2019年4-6月期の決算説明会において、同社が半導体最先端世代の開発を加速させる意向を明言したことだ。アメリカのアップル、クアルコム、AMDなどのファブレスメーカー向けにプロセッサを生産するTSMCが投資意欲を高めたことは、これまでの半導体関連株への見方を再考させるものとなりそうだ。

2つ目は、日本の韓国への半導体3製品(フッ化水素、EUVレジスト、フッ化ポリイミド)の輸出制限である。これは韓国企業のファンドリ(受託生産)事業のみならず、世界中の半導体関連企業にとって、影響が大きいことが囁かれ始めている。これに伴う新規の生産設備に対する需要を呼び覚ますことも想定されるなか、DRAMのスポット価格も鮮明に反転しつつある。このままDRAM価格の上昇転換が明確になれば、半導体メモリメーカーの投資意欲が上向く時期も早まることが期待される。

その意味では、半導体関連各社の4-6月期決算発表後の株価動向に注目だ。関連各社の減益率、下方修正の件数については、事前予想を上回る悪化ぶりが示される覚悟も必要かもしれない。

ただし、今後の半導体市況が反映される下期回復シナリオに自信が示された場合は、悪材料出尽くしとなる可能性が高い。この原稿の執筆段階では、信越化学工業の2020年3月期計画が開示された。市況悪化の影響で3%減収を予想する半面、コスト管理の厳格化などで純利益は前期比約2%増益を見込んでいる。内容からは今下期(2019年10月-20年3月)回復を前提にしていると推察される。顧客動向などから、同社なりの手応えも得ての観測ではないかと捉えている。

日経平均株価は、2017年11月から2018年11月までのほとんどの期間を2万2000円-2万3000円の狭い価格帯で往来した。今年4月につけた年初来高値2万2362円は戻り売りに上値を抑えられた格好だ。今後も鬼門となりそうなこの年初来高値水準を上放れるには、やはり売買高が膨らむ必要がある。半導体関連株には、海外投資家からの資金を吸収できる規模であることに加え、値動きの大きさも併せ持つ。膠着相場を抜け出す牽引役となることが期待される。

アベノミクス相場継続か否か、見極めの最終段階に

一方で、楽観的な話ばかりではないことも、あわせて覚えておきたい。長期チャートで見れば、日経平均株価は2013年のアベノミクス開始以降の長期上昇トレンドを維持している。しかし、2018年10月高値から同12月までの急落によって、正念場を迎えている。その意味で2019年は、上昇トレンドが持続するのか、あるいは転換してしまうのかを見極める重要な年であり、ここからはまさに、その「最終見極め段階」に来た感もある。

上昇トレンドの持続を確認するには、上記の2万2000円-2万3000円の価格帯を明確に突破する必要がある。もしこの水準を突破できれば、2万3703円(1万8943円《2018年12月26日》から2万2362円《2019年4月29日》までの上げ幅を2万0289円《2019年6月4日》に上乗せした水準)が有力な上値のメドになるとみており、アベノミクス後の高値2万4448円(2018年10月2日)も視界にみえて来そうだ。懸念要因も多い相場環境ではあるが、「言い尽くされた懸念」であれば、結局は杞憂に終わるケースも多い。「買い遅れるリスク」への目配りもしておきたい。

宇野沢 茂樹 NSN株式会社 アナリスト

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うのさわ しげき / Shigeki Unosawa

中央大学法学部卒業。国内証券でデリバティブ業務に従事。投資顧問会社、投資情報会社フィスコを経て2010年9月から現職。日本証券アナリスト協会検定会員。日本テクニカルアナリスト協会検定会員。

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