「東京喰種レストラン」はすべてが異色だった 場所は非公開、赤一色の店内、参加費は1万円

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本来、フレンチに限らず料理は、1皿1皿趣向を凝らし、素材の味わいや季節感、シェフの個性を表現し、客の舌と心に驚きと楽しみを増幅させていくものだ。

今回のコースは喰種の世界観という意味では十分以上に堪能できるものだったが、シェフや食材たちにとっては、その腕前や味を正当なルートで評価してもらえず、やや気の毒なように思えた。

ただし、これは筆者がホラーやお化け屋敷、内臓系にそれほど強くないため、過敏に反応してしまったがゆえともいえる。それらが大好きな人にとっては、料理を引き立てるスパイスとしてちょうどよいのかもしれない。

また、読者層からして、参加者は若い世代が多いと思われ、実際に20代、30代前半が中心と見たが、基本料金1万円に、別途支払いが必要な飲み物が1杯1000円以上という料金設定は高いと感じた。現に、2時間のコースで、皆1〜2杯程度しか注文していなかったようだ。ファンであれば、食後はぜひ、喰種に唯一楽しめる人間の味覚、コーヒーを頼みたいところだろう。

ポイントはここでしか味わえない「特別感」

最後に、企画を監修したアフロマンス氏に、企画のポイントを聞いた。

企画を監修したアフロマンス氏。バックの翼のような形の装飾は、喰種が捕食のときに用いる触手、「赫子(カグネ)」をモチーフとしている(筆者撮影)

「作品をテーマとして、独自の世界観を一からつくりあげたところです。喰種レストランは今回の映画にも出てきますが、コンクリートの打ちっ放しのような感じで、イメージはまったく違います。また、料理も本格的で上質なものを提供し、喰種を知らない人も楽しめるエンターテインメントを目指しました」

1万円という価格設定も、ファンのみならず食通や一般層を含めた「世の中」全体をターゲットと考えたゆえの判断という。

「ここでしか味わえない特別な体験をつくり、世の中に熱量をつくることを心がけています。SNS等で来場された方の声を聞くと、『この内容で1万円は安い』という反響をたくさんいただいています」

また、気になっていた点、ある意味グロテスクさを強調して表現するにあたり、山本英男シェフはマイナス反応を示さなかったのか、ということについても聞いてみた。

「それはまったくありません。もともと新しいものに挑戦する方ですし、逆にアイディアを広げて頂いた。当初われわれが検討していたのはもっとストイックで、すべてのコースが黒一色、赤一色というようなものだったんですよ」

アフロマンス氏の言葉どおり、「ここでしか味わえない」という点では間違いがない。総合的な評価として、喰種の世界観に浸れる、そして知らない人にも楽しめる大人のエンターテインメントといえそうだ。

全世界が口コミでつながるSNSを逆手にとり、あえて非公開とし、都市伝説を思わせる宣伝スタイルにしているのも面白い。また筆者はレストランでの体験後、「東京喰種」のアニメを一気に見てしまった。さまざまなコンテンツに波及する、作品の力を感じる経験だった。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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