「有名人の政治的発言」が叩かれる日本のゆがみ 「遊戯王」作者もインスタグラムで滅多打ちに

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とはいえ、わかっているふりをするのも格好悪い。スウィフトのように、わかる努力をし、わかってから発言するという行動はなかなか賢い選択と言える。

アメリカの有名人らは、慈善事業や社会運動にも積極的に関わっているが、それに関しても同じだ。長年、国連の活動に従事してきたアンジェリーナ・ジョリーほど熱心な人はまれだが、セレブの多くはフェミニズムや銃規制、動物愛護、環境問題など特定の社会的関心事項を持っていて、それについて発言している。

プレミア(映画の封切り日)や記者会見の場では、そういった発言はあまりしないが、それは考えがあってのこと。それらのイベントは、特定の作品の宣伝のためにスタジオが高いお金をかけてやっているものであり、そこではその話に集中するというのがプロというものである。

「発言を止める権利」は誰にもない

しかし彼ら彼女らが、ツイートやフェイスブックなど個人的なツールで何を言おうと、それは本人の自由。そうすることで、スターは「私はかわいいだけじゃないんですよ」とアピールできるし、ファンもそのスターをより深く知ったり、ファンでなかった人もそのスターの新しい側面を発見できたりする。それに、スパイダーマンのセリフではないが、有名人たちは「パワーを何か世のためになることに使わないといけない」とも思っている。

反トランプ、反共和党の風刺画を描いてツイートし、政治的アーティストとして注目され始めたジム・キャリーのツイッター(Twitter:https://twitter.com/JimCarrey/status/1102341380813160448

この2、3年、反トランプ、反共和党の風刺画を描いてツイートし、政治的アーティストとして注目され始めたジム・キャリーは、まさによい例だろう。おバカコメディーで知られてきた彼は、この新たな才能で違った層からも尊敬を集めている。

もちろん過激な絵を見たせいで、もうキャリーの映画は見ないと決めた人も、いくらかはいるかもしれない。それは彼にしても想定内だろう。それに、自分の絵が魔法のランプでないことも彼にはわかっている。

金と名声で大抵のことは思いどおりにできるセレブにも、力が及ばないことはあるのだ。それは、2016年の選挙で、みんなが思い知らされた。

だが、人に耳を傾けてもらえるのがセレブの特権である。世の中にはいろんな意見があるし、「誰かの正しいこと」が「誰にとっても正しいこと」とは限らない。それでも彼ら彼女らは自分が信じた行動を取るし、そもそも民主主義とは自由と平等を約束するものなのだから。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
X:@yukisaruwatari
 

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