60歳以上の会社員に稼ぎ口の確保が難しい事情 「日本型雇用」の壁を意識して事前の備えを
働きたいシニアと、その能力をうまく活用できない企業のすれ違いはなぜ起こるのか。背景には「日本の労働市場の根本的な問題がある」と語るのは、日本総合研究所の安井洋輔主任研究員だ。
「多くのシニア人材には長い経験に裏付けされたスキルがある。ただ日本企業の多くは今も職務や勤務地が限定されない『無限定正社員』を多く抱え、特定のスキルを活かせる仕事を切り出して募集していない。そのしわ寄せがシニア人材に及んでいる」(安井氏)
もちろん、雇用の不安定さは、今やシニアだけの問題ではないだろう。今年に入って、大企業による早期・希望退職の募集が相次いでいる。東芝は1060人、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは700人を募集した。富士通は募集人員を定めていなかったが、2850人が応募した。
終身雇用が転換点に
東京商工リサーチによると、希望・早期退職を募った上場企業は、5月13日時点で16社。2018年通算の12社をすでに上回っている。しかも16社のうち10社が45歳以上を対象にした。大企業に入社しても、長く働ける保証はないのだ。
「働き手の就労期間の延長が見込まれる中で、終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている」(経団連の中西宏明会長)。「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」(トヨタ自動車の豊田章男社長)
財界のトップがそう話すとおり、もはや終身雇用制度が大きな転換点を迎えていることは、多くのビジネスパーソンが実感していることだろう。
そうした中、個人に求められるのは、企業側の変化に期待することよりも、むしろ長く働き続けるための個人としての準備である。
その手段が副業とリカレント教育(学び直し)だ。折しも副業解禁の動きが生じつつあり、パーソル総合研究所の調べでは、副業をしていない人材でも4割にその意向がある。ただ副業市場でもミスマッチが発生しており、その解消策が問われている。さらに時代の変化に合わせた学び直しもシニア就業には不可欠。資格取得はその有効な手段の1つである。
人生100年時代、気づいたときこそが、準備を始めるタイミングといえるだろう。
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