ニトリ「配達スキル」が身につくトラックの正体 7月に訓練車研修スタート、離職防止の効果も

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組み立てが必要な家具の販売は、店頭だけでなく配送・設置までを含めたサービスの内容が会社のイメージを左右しかねない。それだけにニトリにとって配達員の接客や作業スキルの向上は、会社全体の経営戦略の一環でもあるわけだ。

もっとも、このタイミングで研修強化に動いた背景には、社会問題化している配達員の人手不足対策の意味合いも大きい。ホームロジスティクスでは今年3月に全国の物流センターへの食堂の設置を完了させるなど、労働環境の改善を進めてきた。

ニトリ以外の商品配達を拡大へ

一方で配達員の間では、壁を傷つけるなど配送作業時に失敗した経験が離職につながってしまうケースが多かった。研修を強化して配達員の技術面での不安を取り除くことができれば、離職率を抑える効果も期待できる。ホームロジスティクスの五十嵐社長は「技術力を高めて、弊社で仕事を続けていただくことになれば」と期待を寄せる。

配達員への教育の徹底は、会社のイメージアップにもつながる。ホームロジスティクスではニトリの商品の配送がおよそ95%を占めるが、ニトリ以外の150社以上の企業からも大型商品の配達を請け負っている。

ニトリの商品だけでは地域や時期によって需要にばらつきがあり、トラック1台当たりの積載効率を平準化するためにも、同社ではニトリ以外の商品の配達を拡大していく方針だ。新たな荷主を開拓するうえでも、配達サービスの質の高さは大きなアピール材料となる。

一般的なSPA(製造小売業)ではなく、「製造“物流”小売業」を自称するニトリ。通常の小売企業の事業領域では考えられないような地道な取り組みの積み重ねこそ、今後のさらなる成長の下支えとなりそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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