19歳から3人産んだ女性が岐路で下した「決断」 子どもと自分を守るために何ができるか

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その後、新興宗教にハマり、孫を入信させようとする義両親とのトラブルに直面。子どもたちのため、離婚だけは避けようとしてきたが、結婚10年目を迎える頃には、さすがに夫婦関係はギクシャクしたものに。結婚当初、愛さんがあれだけ好ましく思っていた夫の子煩悩な側面も、すでにかつてのようではなくなってしまっていた。

そこからの半年間は、離婚したい愛さんと、離婚したくない夫の間で、泥沼の離婚劇。その影響は小学6年生、4年生、2年生になっていた子どもたちにも及んだ。下の2人は夜泣きがひどくなり、長女は反抗期も重なって不登校になってしまった。愛さんは毎晩ほぼ一睡もせず子どもたちをあやし、長女が落ち着くまで毎日学校へ送り迎えをした。

そしてようやく、離婚騒動が終焉を迎える。

「夫に300万円の借金があることが発覚したんです。逆に私は、クラブ時代に蓄えた300万円以上の貯金と、離婚騒動が起きる前に始めた、タウン誌の営業での稼ぎがありました。そもそも生活費も、途中からは私が大半を賄っていました。初めは親権を主張していた夫も、それを突きつけると無言に。当然子どもたちも、私と暮らすことを希望しました」

養育費に関しては、月に1万5000円の支払いが限界だと言われた。「呆れましたが、のむしかなかった」(愛さん)。

35歳までには、正社員として転職がしたい

調べると、養育費は収入扱いになり、母子手当が減ってしまうこともわかった。無理に取り立てる必要はないな、と割り切ったという。そしてようやく離婚が成立。現在愛さんは3人の子どもたちと東京近郊のマンションで暮らしている。

離婚後2年が経過した現在、夫から養育費は振り込まれていない。現状の収入としては、販売員として働く愛さんの月収が25万円。そこに2種類の母子手当と児童手当で月に約10万円が支給されている。

「これからは収入をもっと上げていかないと、と思っています。いつまでも手当に頼っているわけにもいきません。子どもたちの今後のためにも、35歳までには、正社員として転職がしたい。今は今後の方向性を必死で模索している最中です」

重大な決断を経てきた愛さんだが、今彼女に悲愴感は感じられない。

「若い頃から、幸せな普通の家族を夢見ていました。優しい旦那さんがいて、私は子どもとゆっくり向き合って、時には一緒にお菓子を作ったりして……。でも今の私は1人、毎朝バタバタとご飯を食べさせて子どもたちを送り出し、そのまま仕事へ。帰宅後は家事をしながら子どもたちの面倒を見て。てんやわんやです。それでも長女は妹・弟思いのしっかりものに、次女はマイペースなおっとりやさんに、長男はやんちゃ盛りの男の子に、すくすく育ってくれています。大変なこともあるけれど、4人で賑やかに暮らしています。あっけらかんとした性格で、われながらよかったなって(笑)」

恋愛体質で、自ら波乱の生活に突き進んだ面はある。それでも必要な場面では自らきっちりと決断を下してきた。愛さんが心から3人の子どもたちを愛し、できる限り不自由な思いをさせないよう、笑顔で育てるという姿勢も一貫している。そんな選択をした愛さんと子どもたちの未来が、健やかであることを願ってやまない。

本連載では、取材をさせていただける方を募集しています。お子さんがいて離婚をされた方の応募をお待ちしております。ご応募はこちらのフォームより。
波多野 友子 ライター

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はたの ともこ / Tomoko Hatano

日本大学芸術学部写真学科卒。大手テーマパークでオフィシャルフォトグラファーを務めた後、2012年にフリーライターへ転身。執筆は企業オウンドメディア、女性向けメディア、サッカーメディアなど多岐にわたる。育児や女性の働き方に関心を寄せる1児の母でもある。

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