「何でもみんなで決める上司」が実はダメな理由 民主的すぎるリーダーの落とし穴

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彼は一生懸命で、みんなの意見を大事にしたい気持ちは120点ですし、長年の付き合いですので、彼の最高の人柄も十分に知っています。では、彼はどうすればよかったのでしょう。

トップダウンとボトムアップの使い分けを知ることです。その際のポイントが、これ。

やるべきこと(方針)はトップダウンで決め、やり方(方法)はボトムアップで任せる

リーダーが明確な方針を打ち出すと変わる

参考になるのは、車両清掃を請け負う「株式会社JR東日本テクノハート TESSEI」の元おもてなし創造部長・矢部輝夫氏のやり方。矢部氏は車両清掃の仕事にホスピタリティーを持ち込んだ第一人者と言われており、この会社の清掃の鮮やかさは、ハーバード・ビジネス・スクールの『ケース・スタディ』にも登場するほどです。

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今ではエクセレントカンパニーと言われる同社ですが、もともとは従業員のモチベーションが低かったと言います。「掃除をすればいいだけ」、そんな空気が蔓延していたのです。そこで、矢部氏がリーダーとして方針を明確に打ち出します。「清掃を通して、旅先の思い出を売るのだ」と。

そのうえで、みんなで考える機会を設けました。駅のホームで駆けまわる子どもは危ないものです。そこで、じっと待てるように「ぬり絵」を作ったのも、スタッフからの提案でした。ほかにも「駅構内になかったベビー休憩室を設置」「新幹線は男女兼用のトイレしかなかったので、女性専用トイレを設置(JR東日本の新幹線のみ)」。これらも部下からの提案で導入されたもの。

つまり、「方針」「やるべきこと」はリーダーがトップダウンで決めるからこそ、部下のボトムアップを効果的に引き出せるわけです。

「みんなで決めた」と言うリーダーが増えていますが、決めるのはリーダーです。ぜひ、「方針」「やるべきこと」はリーダーが決め、「方法」をみんなで考えるようにしてみてください。そのほうが、部下はやりやすくなります。

伊庭 正康 らしさラボ代表

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いば まさやす / Masayasu Iba

1991年リクルートグループ入社。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。その後はプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回、累計40回以上の社内表彰を受ける。営業部長、フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社らしさラボを設立。リクルートで学んだ「圧倒的な当事者意識」を持つことや「短時間で成果を出す方法」などをメインテーマに、リーディングカンパニーを中心に年間200回を超えるセッション(営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演)を行い、リピート率は9割を超えている。

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