武田薬品「いいところ取り」グローバル化の限界 クローバック条項で株主提案側の実質勝利へ

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武田にとってもう1つの誤算は、議決権行使助言会社大手のISSとグラスルイスが、株主提案に賛成の姿勢を示したことだ。両社とも機関投資家の株主総会での議案の賛否決定に大きな影響力を持つ。ましてやシャイアー買収時の新株発行の結果、武田株式の5割を保有するのが海外の機関投資家である。武田にとってはある意味脅威だった。

ISSに至っては、会社側が提案するウエバー社長の取締役選任を反対推奨した。同社が推奨するのは、過去5年間の資本効率(ROE)が5%以上であること。武田の場合は2019年3月期までの平均が3%で、今後の改善もはっきりとは期待できないという点が反対推奨した理由だと思われる。

ISSの意向が公になった直後の14日、武田は取締役報酬制度を変更する目的などを説明する文書を発表。17日には坂根議長名でウエバー社長の取締役信任を訴える公開文書を出した。

坂根議長は「驚きを隠せない」とISSを非難

坂根氏はこの中で「こういった推奨(ISSによるウエバー社長取締役反対への推奨)が出たことについて、私は驚きを隠せず理解が出来ない。(中略)シャイアー社買収に賛同頂いた90%の株主の皆様の期待を無にするものであると思います」と異例の強い表現でISSを非難した。

欧米企業は、業績に連動した取締役報酬の比率を拡大すると同時に、クローバック報酬制で過度なリスクへの備えも怠らない。しかし、武田の会社側提案は前者のみを導入するものだった。シャイアー買収でメガファーマ入りを目指しているのに、これでは「いいところ取り」(考える会)と批判されても仕方がないだろう。

しかも、社外取締役が過半を占め、監査等委員会設置会社に移行するなど、先進的なガバナンスを売りにしている割には、株主提案を受けてこうした制度を導入するなど、真のグローバル企業としての心構えが出来ていないことが露呈した。

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