実は川重より巨大、三菱電機の「鉄道ビジネス」 車両を造らないのに鉄道関連売上高2000億円

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JR東海(東海旅客鉄道)が20年度から東海道新幹線に投入する予定の新型新幹線車両「N700S」。6月6日深夜に行われた速度向上試験では時速360kmを達成して話題になったが、実は、この新型車両の開発も三菱電機を抜きには語れない。

8両編成になったN700S。新型駆動システムの採用により、改造なしで短編成化できる(撮影:尾形文繁)

全国各地を走る新幹線の車両にも三菱電機製の主変圧器や主変換装置が使われている。N700Sについては、同社は東芝や日立、富士電機、JR東海と共同で、SiC(シリコンカーバイド)素子を活用した従来よりもコンパクトな駆動システムを開発。その小型・軽量化した新駆動システムを新型車両・N700Sの床下に工夫して再配置することによって、これまで16両編成が基本だった列車を改造なしに短編成化することが容易になった。

将来N700Sを導入する可能性がある新幹線の路線は、国内では長崎新幹線、海外では台湾新幹線。いずれも基本の16両編成だと座席数が多すぎ、導入時には短編成化の改造が必要だ。それが簡単にできれば、車両価格も抑えられる。

海外へは「エアコン」で切り込む

今から5年前、三菱電機は鉄道関連の年間売上高を3200億円へ拡大する目標を掲げていた。現在も諦めてはいないが、「国内シェア(6割)をさらに高めるのは難しい」(漆間専務)。となると、事業拡大のカギを握るのは海外だ。現在、鉄道関連売り上げに占める海外比率は3割程度(約600億円)。目標達成のためには、海外での商売を2.5倍以上に引き上げる必要がある。

車両製造で「世界ビッグスリー」と呼ばれる、独シーメンス、仏アルストム、そしてカナダのボンバルディアは、いずれも電機品を自社で製造している。したがって、三菱電機が食い込む余地は小さい。

三菱電機製のエアコンを搭載するロンドン地下鉄の車両(撮影:橋爪智之)

しかし、ゼロではない。実はビッグスリーはエアコンを造っておらず、三菱電機の納入品を搭載した事例がある。欧州でも近年の温暖化は深刻な問題だ。欧州ではエアコン未搭載の古い車両がまだ多く、新型車両への切り換え時にはエアコン搭載が必至だ。

世界最古の地下鉄として有名なロンドン地下鉄がその代表例である。これまでエアコンが設置されていなかった同地下鉄に、ボンバルディア製の新型車両が10〜15年に導入されたが、車両の搭載エアコンは三菱電機製だった。

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