実は川重より巨大、三菱電機の「鉄道ビジネス」 車両を造らないのに鉄道関連売上高2000億円
ビッグスリーに次ぐ中堅クラスの車両メーカーになると、スイスのシュタッドラー・レールなど電機品を手がけていない企業が大半。そこに商機がある。
さらに、「今後はメーカーだけでなく、海外の鉄道会社にも当社をもっとPRしていきたい」と、漆間専務は言う。日本では、JRが車両の製造を車両メーカーに発注する際、搭載する電機品のメーカーを指定することが多い。海外では部品も含めて車両メーカー任せの例が多いが、鉄道会社のニーズに応えた電機品を開発して、鉄道会社から車両メーカーに採用を働きかけてもらう。メーカーと鉄道会社の営業の接点を増やすことで売り上げを伸ばしたいという。
鉄道のIT化が追い風に
今年2月から運行を開始した、東京メトロ丸ノ内線の新型車両。丸くて赤いデザインが評判となったが、乗客の見えない部分では三菱電機の車両状態監視・分析システムが活躍する。
例えば、運行する列車が搭載する機器の動作状況を随時データセンターに集約し、ビッグデータとして分析することで、故障の予兆を事前に把握し対処する。これは「CBM」(状態基準保全)と呼ばれる技術で、世界の鉄道メーカーが開発を急ぐ。
鉄道会社にとっては故障発生前に修理や部品交換を行うことで安全性が向上するほか、人手を介したメンテナンスのコスト削減につながる。メーカーにとっては保守業務の一部を担うことで長期的なビジネスとなる。CBMは山手線の新型車両ですでに採用されているほか、新幹線でも採用の動きが見られる。
無線技術を活用した列車制御システムも、信号など地上設備の多くが不要になりコスト削減につながるほか、列車本数を増やせるなどのメリットもあり、世界的に関心が高い。
日本では三菱電機などが開発に参加した、JR東日本のシステム「ATACS」が仙石線や埼京線ですでに使用されている。丸ノ内線には無線式信号システムの関連装置を納入した。
コスト削減や乗客サービス向上につながる鉄道業界におけるIT化の流れは、間違いなく三菱電機にとっては追い風だ。そんな中、自動運転を行う横浜のシーサイドラインで6月1日に逆走事故が起きた。自動運転のシステム上、「逆走することはまったく想定していなかった」と運行会社の幹部も驚きを隠さない。
IT化とはブラックボックス化のようなものだ。鉄道のIT化が進むと、従来の手作業に頼ったメンテナンスではシステムのトラブルを見抜くことが容易でなくなる。その意味では、万が一トラブルが起きた際にも、確実に列車を止められるフェイルセーフ的な性能をさらに高めることができれば、三菱電機の鉄道事業の拡大につながるはずだ。
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