空き家840万超でも中古流通が進まぬ深刻事情 住宅大手10社が力を入れるスムストックとは
2018年度(年度は7月~翌年6月)までの流通実績は、累計で1万0362棟になるとされている。2018年度は1800棟(前年度比3%増)の見込みで、毎年増加している。ただ、新築に関しては、年間1万棟以上を販売する住宅事業者はわが国にはいくつかある。年間販売1800棟規模の事業者も珍しくはない。
そう考えるとこの実績は少ないと言わざるをえない。加盟10社が供給した既存住宅は、戸建てだけで約370万棟(2018年9月時点)。年間の推定流通数は約1万2000棟で、2018年度の1800棟はその約15%にすぎない。
認知度向上が課題
つまり、約85%は一般の流通事業者に流れているわけで、捕捉率に課題があるのだ。では、なぜ捕捉率が低いのか。それは、この制度があることを認知していない既存住宅のオーナーが多いからである。
このため、各社ごとに点検やアフターサービスを行う際にオーナーへ仕組みについての紹介、説明を行っているほか、協議会でも住宅展示場などでイベントを行うなど、認知度向上に努めている。
余談だが、捕捉率が低く推移しているのは、スムストックの仕組みで査定する以上の金額を、顧客に提示する不動産事業者がいるという理由もある。彼らにすれば、「ハウスメーカーの建物だから安心です」などと、建物の健全性について説明する手間が省け、販売しやすいのだ。
課題はこのほかにもある。そもそも既存住宅事業に従事する人員があまり多くないことだ。これは、新築住宅事業のほうが収益が大きく、収益が少ない既存住宅流通事業に多くの人を配置しづらいことによる。要するに、大手ハウスメーカーですら、既存住宅流通に対応するための体制が十分に整っていないのだ。
この点が根本的に改善されるためには、流通量そのものの増大が大前提で、時間がかかりそうだ。協議会では、直接販売に携わることができるスムストック住宅販売士(2018年12月時点で6290人)の拡充を目指している。
スムストックのような先鋭的な仕組みにおいても、既存住宅流通の拡大にはこのように課題が多い。では、スムストック以外の工務店などが建てた既存住宅に関しては今、どのような取り組みが行われ、課題があるのだろうか。
1つ目は、前出の「安心R住宅」に関するものだ。今年4月末時点で9団体が登録しており、登録事業者の幅が広がりつつある。「安心」の基準に対する問題の指摘がないわけではないが、それでも住宅・不動産業界に既存住宅流通を前向きに捉える機運ができたことは評価できよう。ちなみに、優良ストック住宅推進協議会はその登録第1号となっている。
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