アメリカで激しくなっている「中国排除」の実態 教育機関や留学生まで「標的」に
さらにアメリカは、ここ10年で5倍も増えた中国留学生をも締め出しの対象とした。中国共産党と関わりの深い留学生組織「中国学生学者連合会」を通じて、留学生にスパイ活動をさせていると疑われるようになったのだ。ロイター通信によれば、2018年6月、アメリカ国務省は、中国人留学生のうち航空工学やロボット工学など、最先端の製造業分野を専攻する中国人大学院生らのビザ有効期限を、5年から1年に大幅短縮すると決定。スパイ活動や、知的財産権の侵害を未然に防ぐことが目的だとしている。
さらに、政府高官レベルでは、アメリカ国内での中国によるスパイ行為などを探知すべく、アメリカ政府職員を対象に行う教育・訓練と同様のものを、アメリカの大学の職員に対しても実施することを計画中という。また、中国人学生や学者などの電話やインターネット利用動向も監視対象とされるようだ。
アメリカで活発に世論作り
一方、中国はかねてより同じ手法でもってアメリカにアプローチしてきた。中国は、その安全保障戦略に「三戦」(世論戦、法律戦、心理戦)を掲げている。経済や文化交流、人的交流を通じて海外の世論を工作し、敵の戦闘意思を取り除き、中国寄りに仕向けることが目的だ。そのためにも中国は、「公共外交」、つまりはパブリック・ディプロマシー(PD)をもってイメージ向上を図ってきた。
中国のPDは、共産党が司令塔となり大々的に行われてきた。中国共産党中央委員会の直轄「中央統一戦線工作部」(統戦部)が中国PDの背後におり、海外のメディアやロビー団体、シンクタンク、中国人留学生を動かし、活発にアメリカの世論作りを行ってきた。
こうした中国PDの強みは、共産党一党統治の権威主義的体制のもと、人員や財源といった豊富な資源を大規模に投入できることだろう。アメリカの議会議員や大企業に働きかけるべく、多額の予算を投じ、ロビー活動を行うことで、アメリカにおける親中派を増やしてきた。
さらに孔子学院は、中国のPD戦略の代表選手であり、ソフトパワーの象徴でもある。2004年に韓国での開学を皮切りに、世界中の教育機関に設立されてきた。
こうしてみると、実は中国がアメリカに対して行ってきた工作活動は、今も昔も何ら変わらない。もちろん、情報通信技術の革新に伴い、ハッキングなどの技術は格段に進歩したが、大まかな手口も方針も一貫しているのだ。こうした中国の外交手法を、アメリカは最近になってようやくシャープパワーと呼び、締め出しにかかっているのである。
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