共働き世帯の台頭で激変する住宅の販売現場 時短・効率重視でVRやARを活用した営業も増

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「デジタルネイティブ」世代と言われる20~30代の共働き夫婦に合うよう、各住宅メーカーで行われている最新の取り組みを紹介(写真:IYO/PIXTA)

建設業界、なかでも住宅分野は仕事の多くを「人」に依存する割合が高い世界である。そのため、社会の変化、とくに国が進める働き方改革の影響を強く受けようとしている。今、それに対応するための変革の波は営業現場だけでなく、商品そのものにも及んできている。

本稿では、その事例を紹介しながら、背景や住宅業界が抱える特殊な事情にも迫ってみた。住宅関連の業務が以前とはずいぶんと異なるかたちになりつつあることを理解いただけるのではないだろうか。

顧客・社員の負担を軽減する狙い

象徴的なのが、旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)が5月から発売している「my DESSIN(マイデッサン)」という新商品だ。顧客からの評価が高い仕様をあらかじめパッケージ化、部分的に好みに合わせてカスタマイズできる。2階建てで560パターン、3階建てで68パターン(いずれも敷地条件などから選択できる)からなる。

いわゆる注文住宅の「企画型」で、同種の仕組みによる商品はほかのハウスメーカーにはすでに存在しているが、「マイデッサン」が特徴的なのは、顧客がタブレットなどで設備やインテリアを、彼らの好きな時間に見て決めることができる点だ。「資産価値や流通性までを考え抜いた」(旭化成ホームズ)という。

「マイデッサン」専用Webページでは、代表的なプランについてさまざまな角度から空間デザインを確認できる(写真:旭化成ホームズ)

旭化成ホームズは新たな仕組みによる商品を発売したわけだが、その狙いが住宅業界の現状をよく表している。

狙いを理解するためには、彼らが主力とする注文住宅における「商品」のあり方について説明しておく必要があるだろう。

注文住宅は大きく、前述の企画型とフリー設計の2タイプに分かれる。

フリー設計は顧客と住宅事業者側(営業担当者・設計担当者など)が、何度も打ち合わせを行うなかで顧客の理想の家の実現を目指すのが通常だ。モデルハウスでの出会いから、ニーズの聞き取り、プランの検討、契約に関する説明などが続く。

このほか、内装や外構の検討もあるうえ、土地を持たない顧客に対しては、土地の紹介とその下見なども必要となる。よって、その回数は規模や金額にもよるが、十数回、場合によっては数十回になるケースもある。

要するに、フリー設計に顧客を誘導することで、双方にとって多大な時間と労力を必要とするわけだ。一方、企画型は間取りなどがある程度限定されているなかで打ち合わせが進むため、両方の負担はある程度軽減される。新商品の狙いはそこにある。

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