ほかにもいろんな軸があるんですけれども、次はお客さんに対して、どういうことを考えているのかをお話したいと思います。
(三越伊勢丹の)大西さんもおっしゃっていたように、今までは割と利便性だとか相対価値という形で表現されていたものが多かったと思うんです。たとえば24時間いつでも買えるとか、外に出なくても買えるとか、重い物を運ばなくていいだとか。こういう話は、お子さんのいらっしゃるお母さんなどには、すごく助かる話です。あるいは価格比較できるとか、種類が豊富、値段競争力があるとかをウリとして、今まで伸びてきたんですね。
ただ僕が思うに、eコマースが(小売全体の)7%にとどまっているのは、eコマースを“使い始める理由”と“使い続ける理由”が別だからなんですね。利便性っていうのは使い続ける理由であって、使い始める理由にならない、ということがよくあるんですね。
「感情価値」の必要性
もちろん、これから利便性というのは競争力の根源にはなっていくわけですけれども、ちょっと違った観点で、eコマースをとらえていきたいなと思っています。たとえば、楽天のすごく大事な言葉として、「ショッピングイズエンターテインメント」というのがあるんですね。購買体験っていうのは、買った物のよさだけではなくて、購買体験そのものが楽しくあるべきだということです。
たとえば、IKEAさんがオフラインで成功しているのは、買うこと自体がすごく楽しく、行くこと自体がデートになるからですよね。そうした体験をこれから作っていけるんじゃないか、というようなことを僕らはたくらんでおります。
最後は、いちばん最初の話に結び付くのですが、やっぱり感情価値による購買というのが、買い始める理由になるんじゃないか。
僕も経験値としてあるんですけれども、ずっとアメリカに住んでいて、母の日のプレゼントとして、お母さんに何か贈りたいんですね。でも、ありきたりのものは贈りたくないんですよ。バラだけ贈ったってあんまり喜んでくれないだろうし。やっぱり特別な人には特別な物を贈りたい。その思いを店舗を通じて表現できるということは、やっぱりすごく大きいですね。これが僕にとって、大学1年生のときに、楽天を頻繁に使うようになった理由なのですね。
買い始める理由というのはやっぱり、感情価値が伴っていないといけない。「行動変容」というのは非常に大きな変化ですから。こういった感情価値をインターネットにいくら乗せられるか、を試すことによって、たぶんeコマースで買い物する人がすごく増えていくんじゃないかと思っております。ちょっと長くなりましたが。すいません。