楽天、ハーバード卒28歳役員が語るEC戦略 小売り・eコマースの未来像(2)

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どんどんテクノロジーに置き換える

楽天はご存じのように、「B to B to C」ビジネスでやっておりまして。楽天市場から店舗さんへのプラットフォームを提供させていただいて、店舗さんがお客さんをおもてなしする、というプラットフォームになっています。そこで、僕らのビジネスとしては、店舗さんへのサービスと、お客さんへのサービスという、2つに分かれるんですね。それをちょっと、別々に話していきたいと思います。

北川拓也(きたがわ・たくや)
楽天執行役員 編成部ビヘイビアインサイトストラテジ室室長
1985年生まれ。灘中学・灘高校卒業後、ハーバード大学に進学。数学、物理学を専攻し最優等の成績で卒業。その後、ハーバード大学院にて博士課程修了。理論物理学者。現在は執行役員としてデータサイエンスのチームを率いる

第一に、僕らの中では、店舗さんという存在が非常に大事です。Empowerment、つまりは、いかに店舗さんがお客さんに対しておもてなしをする際に、僕らがフォローできるかが大事なんですね。

おもてなしというのは、もちろん僕ら自身もお客さんに対して提供していくものではありますが、やっぱりモノへすごい思い入れがあるとか、日々お客さんの顔を見ている店舗さんには勝てないと思うところがあります。そこを、よりテクノロジーとオペレーションの力を使って店舗さんにしか出せないバリューというのをどんどん出していってもらおう、というのが楽天自身の思いです。

その一例として、サイト戦略があるんですね。リアル店舗では、店内の棚の作り方や、お店の置き方を考える話になると思いますが、インターネットでは、サイトの構築ということになります。実際に楽天のある店舗さんは人の顔を全面に出していくことによって、非常にウェルカムな感じを醸し出したサイト作りに成功しています。

僕のように、データサイエンスとかやっている立場としては、あるページのどの要素がお客さんの心を捕まえているのだろうか、どういった感情を作ることができているのか、を理解していきたいと思っています。もしそれができたら、店舗さんにも「ここ効いていますよ」とお伝えして、店舗をだんだんとよくしていけるのではないかと考えております。

ほかにもいろんな軸があります。たとえば、顧客戦略です。大きな会社は、マーケティング部や、データ解析の部門があって、顧客戦略を立てるのが容易ですが、中小の店舗さんの「いいものは作っているんだけど、実際はひとりでやってんねん」みたいなところは、顧客をクラスタリングしてどうのこうのみたいなことはやりづらいんですね。

僕らとしては、4万店舗もある中で、データサイエンスなどを通して、「あなたの店舗のいいところはこれですよ」「新規顧客はこういう物を買ってだんだんヘビーユーザーになってくれるんですよ」「ヘビーユーザーはこういう理由で買い続けてくれているんですよ」といったことを一目で見られるようにしたい。しかもそれが次のアクションにつながるようなプラットフォームを作ることができたら、より質の高いサービスを提供していけるんじゃないかと思っているんですね。

つまり僕らとしては、人がやらなくてもいいところを全部テクノロジーに置き変えることによって、店舗さんの質をとにかく上げていきたいんですね。

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