スターアジアvs.さくら、Jリート再編劇の行方 成長は手詰まり、小型リート再編の序章か

拡大
縮小

さくらの運用会社であるさくら不動産投資顧問アジア統括のピーター・マーフィー氏は「物件を供給することだけがスポンサーの役割ではない。保有物件の価値を高めたり、海外ファンドから物件情報を提供したりすることも重要だ」と話す。

成長が頭打ちなのはスターアジアも同様だ。新規の物件取得が容易ではない中、合併による成長戦略に踏み切ったといえる。大手デベロッパーの資産運用担当者は「事務手数料や上場維持コストなど(リートの運営費用は)決して小さくない。資産規模が大きくなるほど、効率的な物件の運用が可能になる」と話す。

カギを握る「みなし賛成制」

今後の焦点は、スターアジア側が申し立てた臨時投資主総会の招集の行方だ。

スターアジアが合併提案を発表した5月10日以降、両REITの株価は上昇した。市場は一見、再編を好感しているようにも見えるが、「投資家はスターアジアの提案の危険性を理解していない。場合によっては投資主が不利益を被る可能性もある」(マーフィー氏)と訴える。

7月の臨時投資主総会で、スターアジア側はさくらの執行役員と資産運用会社の交代を訴えている。仮に臨時投資主総会の招集が認められた場合、スターアジア、さくら双方による委任状争奪戦に発展すると考えられるが、さくらはREIT特有の「みなし賛成制度」を問題視する。

議決権を行使しない投資主は自動的に賛成とみなされるもので、合併反対票が賛成票を上回ったとしても、それ以上に無投票が多ければスターアジアに軍配が上がる。「REITの投資主には高齢者が多く、議決権を行使しない人も少なくない」(マーフィー氏)とさくらは危機感を募らせる。

次ページ合併認められても残る課題とは
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT