顧客が絶対にハマる保険営業の「殺し文句」とは 「誘惑の甘いワナ」にひっかかってはいけない

拡大
縮小

「将来支払えない可能性があるなら、保険は契約すべきではありませんよ」とお伝えするのが「顧客本位」ですよね。保険も1つの「お金の置き場所」で「流動性が低いという特徴がある」ということを、穂香さんに教えてあげるべきだったのではないでしょうか。

「投資+保険」=「一石二鳥」は大きな間違い

穂香さんが契約した保険は、米ドル建ての保険料を1ドル=110円として計算すると(5月下旬の相談時)、円建ての保険料と合わせて、毎月約3万4000円でした。穂香さんは、今は保障を持つ必要はありませんので、保険は全部解約して、このお金を、つみたてNISAで国内外のインデックスファンドで運用していくといいと思います。会社の選択制DCも利用すべきですし、自分で上乗せ拠出ができるのなら上限まで使うとよいでしょう。

『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

穂香さんは、「自分で、投資信託を買って運用する知識や勇気がなかったので、代わりに投資をしてくれて、さらに保険もついてくるならそれでもいいのではないか」と思ったそうです。また、「貯蓄性の保険なら、少し損をすることになっても、掛け捨ての保険のように、何事もなければ支払った保険料は無駄になるわけではないから」とも考えたそうです。

しかし、公的保障のある穂香さんにとって、私的保険に加入する必要は、今はないでしょう。そもそも必要のない保障を持って、その分運用益を毀損するのはもったいないです。保険は、結婚して子どもができたときに考えればよいでしょう。

穂香さん、何回か支払った保険料はもったいないですが、勉強代と諦めて、今後に生かしてもらいたいですね。

お金を増やすためには、「適切に分散して、低コストの商品で長期運用する」ことが重要です。「つみたてNISA」は、少額からの長期・積立・分散投資をするための非課税制度です。対象商品は、金融庁の設けた基準に沿って厳選されていて、販売手数料がかからず、保有期間にかかる手数料が一定以下の低水準であること、頻繁に分配金が支払われないこと、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されています。初心者の方にこそ最初に利用してほしい制度です。時間を味方につけて、正しい方法でお金を増やしていきましょう。金融庁の資料にもポイントがわかりやすく解説されていますので参考にしてください。
岩城 みずほ ファイナンシャルプランナー・CFPⓇ

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いわき・みずほ / Mizuho Iwaki

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、お客様の利益を最大限に、中立的な立場でのコンサルティングほか、講演、執筆を行っている。
慶応義塾大学卒。NHK松山放送局を経て、フリーアナウンサーとして14年間活動後、会社員を経てFPとして独立。著書に増補改訂版『人生にお金はいくら必要か』(山崎元氏と共著・東洋経済新報社)、『やってはいけない!老後の資産運用』(ビジネス社)、『「保険でお金を増やす」はリスクがいっぱい』(日本経済新聞出版社)、『結局、老後2000万円問題ってどうなったんですか?』(サンマーク出版)ほか多数。HP

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT