顧客が絶対にハマる保険営業の「殺し文句」とは 「誘惑の甘いワナ」にひっかかってはいけない

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そのFPは穂香さんに、こんなことも言ったそうです。

「自分で投資してもうまくいくとは限らないけれど、外貨建て保険なら必ず増えますよ。今後の円安に備えて外貨を分散して持つことは大切です。それに、DC制度は60歳まで引き出せませんが、保険なら必要になったときに引き出せますし、もし保険料が払えなくなっても、払った分を運用し続けることができるので、ともかく元本割れしないところまでは頑張って保険料を納めましょう」

外貨建て保険は高コスト、持つ必要はない

この連載で何度も書いていますが、外貨建て保険で保証されるのは外貨ベースですので、為替の動向次第で、円で受け取ったときに元本割れする可能性があります。資産の一部に外貨建て資産を持つことは大切ですが、わざわざ、高コストな外貨建て保険で持つ必要はありません。外貨は、円と交換するときの値段が変動しているだけで、金利は生むものの、それ自体が価値を生み出しているわけではないからです。低コストのインデックス投信で海外株に幅広く投資をすれば、長期で企業価値が大きく高まることで、通貨下落を補ってなお収益を得られるケースが過去に見られました。

また「保険なら必要になったときに引き出せる」というのは、「契約者貸付」のことでしょう。契約者貸付は、解約返戻金の一定範囲で借り入れができる制度ですが、あくまで借り入れなので、利息を支払わなければなりません。契約者から徴収した保険料は、将来の保険金支払いのために契約者全体の共同の準備財産として、生命保険会社が管理運用しているからです。

さらに「保険料が払えなくなっても、払った分を運用し続けることができる」というのは、払い済み保険にすることを指しているのでしょうが、「もし保険料を支払えなくなったら」という前提で、「元本割れしないところまでは頑張って保険料を納めましょう」というのは苦しいトークです。保険は、契約後一定期間内(10年未満が一般的ですが、もっと長いものもあります)に解約をすると、解約控除が積立金から差し引かれてしまいます。普通預金にお金を入れておけば、いつでも出し入れ自由ですが、保険はそうではありません。

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