痴漢加害者に四大卒妻子持ちが多いという現実 再発防止のために知っておきたい被害の実態

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だから、痴漢行為を繰り返す人を止めないと、被害者はなくなりません。

被害者の支援はここ数年で少しずつ増えてきましたが、1人の被害者をケアすると同時に、1人の加害者の再発防止プログラムもやっていかないと、きりがないんです。

裏を返すと、1人の加害者が治療につながって痴漢をやめることができれば、これから出る被害者を大幅に減らすことはできます。

痴漢加害者の治療とは?

では、こうした性犯罪はどのようにして防ぐべきでしょうか。性暴力には1次予防、2次予防、3次予防という考え方があります。

1次予防は事前教育、つまり性教育です。公教育の中で、性暴力について学ぶことも取り入れていきましょうということです。

2次予防は、早期発見・早期治療です。これはまだ日本の中に制度としては根付いていません。

都営大江戸線の電光掲示板では、痴漢撲滅を啓蒙する文字が流れる(写真:リディラバジャーナル)

たとえば、アメリカのドラッグコート(薬物専門裁判所)のように、初犯のときに治療か刑罰かを選択できるような制度があればいいと思います。

治療につながるまで平均8年かかっていますから。それを少なくとも3年とか2年にできるだけでも、被害者は減ります。

3次予防は再発防止です。我々がいま取り組んでいることですね。再発防止は治療プログラムの三本柱の一つでもあります。

三本柱は「再発防止」「薬物療法」「性加害行為に責任を取る」の3つです。

再発防止は、被害者や被害者家族、加害者や加害者家族、そして社会にとって最も大事なことです。世界で共通して行われている治療教育プログラムも、この再発防止に時間とエネルギーを注いでいます。

こうした加害者臨床においては変化のステージモデルがあります。ですから、いきなり加害行為に責任を取らせようとしても難しい。

あなたはとんでもないことをしたんだから、謝罪しなさい、反省しなさいと言っても効果はありません。形どおりの反省をするだけです。実際の裁判でも、そうしたことが行われています。

性暴力を繰り返す人の中で、反省の深さと再発率には相関がありません。

周囲から見てすごく反省しているように見えたり、涙を流しながら自分がやったことを悔いている人であっても、その何カ月か後に再犯する人はいます。だからこそ、この再発防止のプログラムはきちんとエビデンスに基づいて組まれた治療でなければなりません。

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