東芝が復活を賭ける「地味な稼ぎ頭」の正体 メモリ事業分離後に残った「最後の半導体」

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ただ、課題は多い。東芝に残った半導体で厳しいのがシステムLSIだ。2017年度は赤字だったが、2018年度も注力し始めていたデータセンター向けなどの新規開拓が進まなかったうえ、中国市場の減速を受けて赤字が続いた。2019年度には約350人の人員削減を決め、関連費用64億円を計上する。黒字化を目指す方針だが、先行きは不透明だ。

石川県能美市にある加賀東芝エレクトロニクス本社(写真:東芝デバイス&ストレージ)

加賀東芝の徳永社長は「われわれが作っているディスクリートと同じ半導体でも、システムLSIは顧客ごとの開発に時間とお金がかかり、成果に結びつけるのが大変だ」と解説する。

かつてはソニーのゲーム機「プレイステーション」に採用されていた時期もあったが、今はそうした大型商品が見当たらない。今後はデーターセンター向けなどを中心に縮小して、採算改善を目指す方針だ。

トヨタ向け自動運転システムにも採用

もっとも、システムLSIの中でも画像認識プロセッサー「ビスコンティ」は強化していく。高精度な画像認識技術により、自動運転が本格化すればキーデバイスとなる可能性を秘めているからだ。特にデンソーからの評価が高く、トヨタ自動車に納入している自動運転関連システムに採用されている。

最新の「ビスコンティ4」はカメラからの入力映像を画像処理し、自車が走行している車線や車両、歩行者、標識、自転車、対向車のヘッドライトなどを認識。ブレーキや車速の調整につなげる仕組みだ。2019年9月には、AI(人工知能)技術を初めて搭載した「ビスコンティ5」のサンプル出荷も始める予定だ。

東芝の半導体事業は2019年度、売上高3430億円(前期比3%減)、営業利益300億円(前期2億円)を見込む。連結業績に対する割合はそれぞれ1割、2割を占める重要な事業になっている。東芝メモリなき今、残った半導体製品群を新たな稼ぎ頭に育成できるか。模索が続きそうだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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