東芝が復活を賭ける「地味な稼ぎ頭」の正体 メモリ事業分離後に残った「最後の半導体」
5月末に加賀東芝を訪れると、旗艦工場である第2製造棟で、車載向けを主力にしている直径200ミリ(8インチ)ウエハの半導体製造装置がフル稼働中だった。シリコンウエハー表面に酸化膜を作り、フォトマスク上のパターンを露光によって焼き付けていく前工程で、微細な埃やゴミ混入が一切許されないため、すべてクリーンルーム内で行われている。
このクリーンルームは奥行き126メートル、幅72メートルほどのサッカー場並みの広さがあり、その中を全身白衣をまとった作業員が忙しく動き回っている。その種類は5000品種以上にも及ぶが、現在は最新のRFID(無線自動識別)タグなどで自動的に製品情報を読み込んでおり、ベテランでなくても人為的ミスが起こりにくい仕組みが構築できているという。
設備は今後拡大する予定で、2020年度には2017年度比でパワー半導体の生産能力を5割増やす。さらに将来に向けても「新工場は建てるか決まっていないが、余地はある」(徳永社長)と話すなど、今後の工場新設も視野に入れている。
中国、韓国勢の参入限られるパワー半導体
メモリが大量生産するのに対し、パワー半導体は多品種少量生産。それゆえに中国や韓国メーカーのパワー半導体事業への参入も限られている。同じパワー半導体を手がける富士電機や三菱電機の業績も好調に推移しており、ドイツのインフィ二オンなどの競合はあるが、日本企業が強い「最後の半導体分野」とされている。東芝もこの分野に活路を見いだそうとしている。
4月には東芝の会長兼CEO(最高経営責任者)に転じた車谷暢昭氏が増設中のクリーンルーム内を直接訪問、「がんばってください」と社員を激励する姿もあった。車谷会長は週刊東洋経済の今年1月のインタビューで、「半導体は間違いなく伸びていく。ここは技術優位が保てる分野で伸ばしていきたい」と語るなど、東芝の新しい中期経営計画「東芝Nextプラン」で成長の柱のひとつに据えている。
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