「ふるさと納税」法改正がむしろ歓迎される理由 ルール強化でふるさと納税は進化していく

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――法改正で「総務省に目をつけられないように」と、自治体が委縮してしまう側面はありませんか。

ふるさと納税の仕事を一緒にしてきた地方自治体の職員に、法改正について「国から押さえつけられるように感じるか」と尋ねたら、「まったく逆だ。むしろもっと厳しくしてほしかった」と言う。

各自治体の障害者就労支援で作られたふるさと納税の返礼品。金銭面以外でもその地域に貢献できる(撮影:尾形文繁)

これまでは一部の自治体がルールを逸脱して、そこに寄付が集中してしまっていた。ふるさと納税の1割か2割かは正確にはわからないが、寄付金の多くが一定の自治体に偏っていた。残りのパイをルールを守っている自治体が分け合う構図になっていた。それが解消されるので、多くの自治体は歓迎モードだ。

さらに、地場産品がないようなところに関しては、隣の自治体などと協力して返礼品をそろえてもよいことになった。自治体の創意工夫が試されるようになったので、そこをチャレンジととらえる自治体もある。

サイレントマジョリティの声が反映された

――法律できちんと制限されたことで、多くの自治体が安心した、と。

そのとおり。今回の法改正だけを切り取って見た場合、たしかに「国が押さえつけている」構図に見えるかもしれないが、総務省がきちんと法整備をしてくれたことに感謝している自治体は多い。

われわれのアンケート結果でも「共通ギフト券をやらない方がいい」と回答した自治体が94%だったように、多くの自治体はルールを遵守して運営してきた。ただ、94%のサイレントマジョリティ(声なき多数派)の声は、なかなかメディアで取り上げてもらえなかった。

今回は、多くの自治体の首長などが総務省に「ルールをきちんと作ってくれ」と陳情に行ったからこそ、その声が伝わって法改正につながったのはたしかだろう。

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