日本メディアの「黒人」描写がかなり残念な理由 2つのCMに見る黒人の位置づけ

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しかし、私は彼に対して怒らなかった。男性教師はただこの好ましくない状況における最良の解決方法を模索しただけなのだ。日本人スタッフに対しても怒りを覚えなかった。彼女もまた、ただ自分の仕事を遂行しただけだ。「お客様は神様です」は、この学校のモットーだった。変更を要求した生徒に対してすら、私は腹を立てなかった。彼女はただ「頭の中の基準」に基づいて先生の好みを言っただけなのだ。

こうした“事件”を何回か経験し、さらに白人でない他の同僚から同様の事件を聞いてからやっと、私は何かがおかしいことに気がついた。ただの外国人ではなく、白人でない外国人を対象とした何か。そして、これらの事件により私は、事実上の顧客の人種差別的な考え方を容認する会社方針に“のって”いたのだ。

サップの「野獣ビジネス」が与える影響

そして、この会社の考え方は少なくとも部分的にはCMの影響を受けている。あの生徒が、授業料が高すぎることで有名なこの英語学校を選んだ理由は、おそらくピンク色のウサギと白人の先生が出演する四六時中流れるあのCMを見たからだろう。“野獣”と1対1の高額のレッスンを受けるときの彼女の失望を想像してみてほしい。

この思い出は、現在避けることのできないもう1つの黒人が出演するCMを思い出させる。日本で人気を得た数少ない黒人セレブの1人であるボブ・サップが出演するb→dash(ビーダッシュ)のCMだ。

サップはキックボクシングと総合格闘技で有名で、しばらくの間「野獣」として知られるリング上のペルソナと、間抜けで愛らしく太ったテディベアとを並置したいと考える日本の広告主に人気があった。今流れているCMも同じ趣旨だ。

広告主が彼の「野獣」のペルソナを利用する(そしてサップがお金を儲ける)のは、問題ではない。だが、黒人との接触の場が少ない日本で彼の「野獣ビジネス」や、そのほかの広告における悪ふざけは、日本人の黒人の見方に大きな影響を与える。

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