日本メディアの「黒人」描写がかなり残念な理由 2つのCMに見る黒人の位置づけ

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最も印象的だったのは、このコマーシャルがいかに「黒さ」を人間的に扱ったかである。CMには日本人女性に英語を教える黒人女性が出演していた。そこでは先生の「黒さ」はまったく強調されていなかったし、彼女自身もCMの中で際立った存在ではなかった。彼女の人種を誇張したり、エキゾチックにしたりすることなく、アフリカ系の人々が、白人系の人々と同様のチャームとアピールをもってファストフードと同じように英語を提供できることを示していた。

こうしたCMには通常、白人男性と女性が出演しているので、このCMに驚いた日本人がいたかもしれない。CMで展開されるほんの数秒の会話によって、この広告主は日本にいる白人以外の外国人につきまとう奇妙さや汚名を取り除いてくれたかもしれない。

クラスの変更を求められた理由

もしこうした広告の出演者がすべて白人の場合、私が英会話を教えていた頃に直面したような問題をもたらしかねない。2004年に、私は当時非常に人気のあった英会話学校のNOVAで働いていた。ある午後、学校に行くと、習慣的にオフィスの壁にあるホワイトボードでその日どのクラスを教えるかをチェックした。そしてメモをとり、レッスンの準備をするために机に向かった。

その後、授業が始まる直前に、日本人スタッフの1人が教員室に入ってきて、スケジュールを少し変更した。これは時折起こることで、つねに私に対する謝罪を伴った。このときも、レベルの高いクラスを教えるはずが、レベルの低いクラスに変えられていたのを見た。私は高いレベルのクラスを教えるのが好きなので変更の理由を尋ねたところ、スタッフは顔を真っ赤にして「あまりうまく伝えられない」と躊躇しながらも、変更は生徒からの要求だったと話した。

それ以上に何かがあると感じたので、さらなる説明を求めた。すると、彼女は私の懸念を上司に伝えた。2人は寄り添って日本語で状況を話し合っていたが、そのときの私は日本語をまったく理解できていなかった。そして、ついに男性教師が私のところにやってきてこう言った。「生徒が別の先生をリクエストしたので、あなたが悪いわけではない。彼女はイギリスに行きたいので、イギリス人の先生と勉強したいそうです。それだけです」。

確かに学校にイギリス人教師は何人かいたが、彼らはみんなその日忙しく、私と代わることになったのは白人のオーストラリア人教師だった(オーストラリア英語はイギリス英語とは明らかにアクセントが異なる)。私がそう指摘したことで、男性教師のウソは台無しになった。

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