豪華寝台「瑞風」は沿線住民の意識を変えた 経済効果だけでなく住民同士の交流の機会に
こうした活動にも、最初はやはり”上からの働きかけ”があったという。「せっかく『TWILIGHT EXPRESS 瑞風』が走り始めるのだから」という意識であり、JR西日本サイドも乗客をもてなしてくれるのなら歓迎という姿勢だった。それが今では「自分たちの楽しみ」として、もっと運行(停車)回数を増やしてほしいとの要望まで寄せられるようにすらなったと、JR西日本は言う。
JR宍道駅自体は、1909年の開業時から残る駅舎を「瑞風」停車を機にリニューアルした。110年の歴史を感じさせる貴重な木造駅舎であるが、設備など基本的な構造は現在も変わりなく、装飾なども、他の停車駅と比べて格別、豪華というわけではない。しかしそこから、当初の思惑など大きく越えた現在のような地域交流へと独自の発展を遂げたのは、ちょうどタイミングよく、新しい宍道支所の建物が完成し、交流の場が駅前にできたことも大きいと、同支所の地域振興課で聞いた。
この支所の前にはコミュニティバスのターミナルも設けられており、町の核として育てようという松江市の方針もうかがえる。それと「瑞風」がうまく合致したのだが、やはり駅前にあればこそであった。これが駅から離れた場所だと、うまくはいかなかっただろう。
クルーと町民の「交流会」に発展
さらに、町の側の歓迎ぶりは、JR西日本の「感謝」を呼んだという。乗客は運行ごとに変わるが、「瑞風」を運行するクルーは、ある程度、固定されたメンバーが毎回やってくる。回送として宍道を発車する時、最後尾の展望デッキにクルーが集まって、町の人たちと手を振り合うことが恒例行事となっているが、それだけにとどまらない交流も生まれている。
最初はJR西日本から「何か、お礼をしたい」と松江市へ意向が示されたとのことだ。そこから自然発生的に進歩。今はクルーが乗務の合間に宍道町を訪れて、町民との「交流会」がしばしば行われている。
2019年1月29日に開催された交流会では、宍道公民館に運転士、車掌や客室クルーと町の人が集まり、宍道高校生の活動報告や、クルーからの列車の紹介、質疑応答タイム、車内演奏家による演奏などが行われた。その後、クルーは宍道小学校やしんじ幼保園も訪問。同じく子どもたちとの交流を深めている。
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