松屋が今さら「格安ステーキ店」を出したワケ いきなり!ステーキより安価で連日の行列

拡大
縮小

ステーキ屋 松への消費者の期待は高く、「関西地方にも出店してほしい」といった問い合わせも少なくない。「もくろみ通り1店舗目を収益化できれば2店目を出したい」(同社広報)と、まずは足場固めを優先し、その後に出店を拡大する方針だ。

各社が苦戦するステーキ業態

ただ、今後の拡大にあたっては乗り越えなければいけない壁も大きい。格安ステーキの市場はすでに過熱し、レッドオーシャン(競争の激しい市場)になりつつある。いきなり!ステーキは2013年に銀座に1号店をオープンして以来、急速に店舗網を拡大してきた。2018年11月には47都道府県への出店を完了し、昨年末時点で397店となった。

いきなり!ステーキは既存店売り上げの前年割れが続いている(記者撮影)

その結果、いきなり!ステーキは自社の店舗どうしで顧客の奪い合いを起こしてしまう。月次の既存店売上高は2018年4月以降、12カ月連続で前年割れの状況となっている。直近の2019年3月は対前年比で26.7%の売り上げ減になっており、下げ止まる気配がない。

居酒屋「はなの舞」などを運営するチムニーも、2018年3月から「アッ!そうだステーキ」を始めた。2019年3月期(2018年4月~2019年3月)の1年間で20店の出店を目標としたものの、首都圏に6店舗を出店した後、3店を閉店し、現在は3店の運営にとどまる。

中部地区を中心にすし居酒屋「や台ずし」を運営するヨシックスも、2018年9月に名古屋市内に「やっぱステーキ!や」を開業した。自席に鉄板を設けて顧客の好みで焼く形態を採用したが、やはり黒字化できずに2019年1月にスピード撤退することになった。

厳しい競争が待ち受けているとはいえ、チムニーやヨシックスは魚をメイン食材とする業態なのに対し、松屋フーズの場合は1000店近くの牛丼店が事業の柱だ。牛肉の調達からコールドチェーンでの物流、調理までの一連のシステムにおいて、独自のノウハウを蓄積している。

牛肉を扱うビジネスに一日の長がある松屋フーズの参入で、ますますヒートアップする格安ステーキの市場。過当競争という荒波を乗り越えるには、消費者の圧倒的支持が欠かせない。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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