日経平均は「消費増税凍結」を織りこみ上昇する 20日発表の重要指標次第で流れが加速する?

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そのきっかけは、5月20日発表の日本の1~3月期GDP速報値だ。市場では前期比マイナスが予想されているが、その数字次第では消費税議論が一気に高まりそうだ。もし増税延期・凍結となれば持たざるリスクが表面化するだろう。そしてその主役は当然内需株となる。

もう一つ、最近の市場では消費税論議とともに論議されている話題がある。MMT(現代金融理論、Modern Monetary Theory)だ。16日、FRB(米連邦準備制度理事会)のラエル・ブレイナード理事は「独自の通貨を持つ国の政府は政府債務残高がどれだけ増加しても問題はないとする同理論について、「経済に関する権限がFRBから議会や政治的意図がある他機関に移るリスクが生じかねない」との懸念を示した。

MMTでは、FRBの責務である雇用と物価の目標達成が、歳出入に関する議会決定に左右されるという強い警戒感だ。最近MMTは、社会保障拡充の財源として民主党議員なども議論している。日本でも国会議員の中に研究会があり、3月の日銀の黒田東彦総裁会見での質問にもあったが、総裁は実質的に答えず、受け流した。その後メディアでも解説され、最近消費税増税延期・凍結論とセットで論議されることが多くなった。

MMTを簡単に説明すれば、「独自の通貨を持つ国は、自国通貨を限度無く発行することが出来るので、デフォルトに陥ることはない。従って、政府債務残高がいくら増加しても問題はない」という考え方だ。例えばシカゴ大学が40人の経済学者にアンケートを取ったところ賛同者がゼロだったように、「危険な理論」ともいわれる。

しかし、債務残高がGDP比で突出しているのにこの理論で安定している国が世界で1つだけある。それが日本だ。例えば日本よりもこの比率が低いギリシャやイタリアの「デフォルトリスク」が取りざたされたりする理由の一つは、両国がユーロを勝手に発行できないためだというわけだ。

GDP次第で、国会解散の流れも?

日本の円が安定しているのは、日本国債の保有者の大部分が国内にあると言われるが、その約半分を持つ日銀は国と一体(これも議論になるが)なので、その通りかもしれないが、国民は別人格だ。決して国と一体ではない。筆者は日本が230%超という世界で突出した対GDP債務残高があっても安定しているのは、このMMTが陰で支えているからだと思う。

もちろん、政府債務の過剰な増加は、どこかの時点でハイパーインフレを起こす可能性があるし、MMTに賛同する学者もほとんどいない。しかし、アメリカの対GDP比債務残高は100%超であり、じりじりとそのレベルを高めている。今後MMTは、賛同者としか思えないトランプ大統領を起点にしてますます盛んになって行くのではないか(「アベ・クロ政策」は隠れMMTだと筆者は思っている)。日銀のぶれない異次元金融政策は、口には出せない(学者の支持がゼロだから)MMTではないかと思えてならない。

さて、事実上のMMTと「セット」の消費税延期・凍結議論だが、筆者は「消費税増税は無理」と以前から述べてきた。その時は少数意見だったが、最近は賛同が増えてきているように思える。その帰趨をめぐる重要なイベントが前述の通り、本日20日の1~3月期GDP速報値だ。数字次第で消費税延期・凍結論が一気に高まる。そうなると当然、国民に信を問う国会解散へと向かうのではないか。

以上のことを勘案、今週の日経平均株価予想レンジは、2万1000円~2万1500円とするが、GDP次第で大きく動く可能性もありそうだ。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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