「中国製」に食指、ヨーロッパ新興鉄道の思惑 高コストの現行車両を他社に譲渡して導入?
オーストリアの民間鉄道会社、ウェストバーン(Westbahn)は今年3月、新型2階建て電車の新規調達に関して、中国の車両メーカーである中国中車(CRRC)と交渉を開始したと現地で報道された。現時点では最終的な合意には至っていないが、交渉は継続的に行われる予定で、早ければ数か月以内にも合意に達する可能性がある。
もし契約が合意に至った場合、すでに供給が決まっているチェコの民間鉄道会社レオ・エクスプレス向けの新型車両とドイツ鉄道の入換用機関車に次ぎ、CRRCにとって3例目のヨーロッパ向け鉄道車両受注案件となる。
では、ウェストバーンとはいったいどんな鉄道会社なのか、そしてなぜCRRC製車両の導入を検討しているのだろうか。
サービスの良さで急成長
ウェストバーンはオーストリア国内の旅客輸送市場に参入すべく2008年に設立された民間の列車運行会社で、2011年からウィーン―ザルツブルク間の運行を開始した。
同社の列車は民間企業ならではのきめ細かいサービスと低廉な価格でたちまち人気となり、運行開始2年目の2013年には早くも黒字を計上。それ以降、同社は黒字経営を続けている。これは、利用客数の増加もさることながら、効率的なコスト・運用管理によるものである、と同社は説明している。
当初は1時間間隔での運行だったが、ウィーンではもともとのターミナルであった西駅発着の便に加え、2017年からは中央駅や市中心部のミッテ駅を経由してプラターシュテルン駅へ至る運行系統を新設し、両系統合わせて30分間隔での運行を開始。西駅発着をWEST green、プラターシュテルン駅発着をWEST blueと色分けした愛称で区別している。
運行を開始した際は、中央駅などメインのターミナル駅に乗り入れさせてもらえないという、民間の新規参入組が必ず受ける「洗礼」も経験した。だが、それを逆手に取って、本来はローカル列車しか発着しないウィーン市内中心部へ至る路線への乗り入れを実現。新たな旅客需要を掘り起こすことにも成功した。
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