「中国製」に食指、ヨーロッパ新興鉄道の思惑 高コストの現行車両を他社に譲渡して導入?
ただし、すべてが順風満帆というわけではなかった。ダイヤ改正で運行本数は倍増の30分間隔となったが、乗客の数も倍増とはいかず、現在は連結する両数を減らすなどして調整している。このため、同社の車両運用には少し余裕が出ている。
一方で同社は、ザルツブルクから先、インスブルックまでの国内ルートと、ドイツのミュンヘンに至る国際ルートの延伸を検討している。このうちミュンヘンへのルートについては、ドイツのバイエルン地方を中心に列車を運行する同国の民間企業、メリディアン鉄道と共同運行すべく話し合いが行われている。
だが、ミュンヘン―ザルツブルク間では線路工事が予定されており、現状ではこれ以上運転本数を増やせないことから、工事が完了するまで乗り入れは延期される予定だ。
現行車両は高性能だが高コスト
ウェストバーンは2011年の運行開始以来、スイスのシュタドラー製2階建て車両「KISS」を使用している。当初は6両編成のみ保有していたが、運行本数の増加と、曜日や時間帯ごとの需給調整に対応するため、2016年からは4両編成も導入。現在は6両編成8本、4両編成9本の合計17編成で運行している。


無料Wi-Fiの提供や充実した売店設備などが特徴のこの車両だが、もっとも特筆すべきは大柄なボディに似合わず、最高時速200kmの俊足を誇る点である。オーストリア鉄道の旗艦列車である「レイルジェット」の時速230kmには及ばないが、電車ならではの高い加速性能により、ほぼ変わらぬ所要時間でウィーン―ザルツブルク間を結んでいる。
性能、サービス面において申し分のない実力を持つ「KISS」ではあるが、メンテナンス費用が高い点がネックとなっているうえ、前述のとおり車両数は過剰気味である。
ウェストバーンはこれを調整する意味も含め、運行区間拡大に合わせた車両の置き換えも検討してきた。そこへCRRCが魅力的な金額でオファーしてきたとすれば、同社製車両の導入を検討するのに十分な理由となるだろう。
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