「中国製」に食指、ヨーロッパ新興鉄道の思惑 高コストの現行車両を他社に譲渡して導入?

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だが、ウェストバーンとドイツ鉄道が車両譲渡に合意したとしても、今年12月からの使用開始は時間的にほぼ不可能だろう。ウェストバーンが別の車両を用意するとしても製造にはそれなりの時間を要するし、その新型車両そのものの認可が獲得できるかという点も問題となってくる。

仮に噂どおり、同社がCRRCの新型車両を導入するならば、それこそ完成後に多くのテスト走行が課せられ、場合によっては営業開始まで数年かかる可能性もある。ましてや、ヨーロッパ諸国に車両を納入した実績がないCRRCが、すぐに認可を取得できる車両を製造できるのか。長年の実績がある現地メーカーですら、場合によっては数年単位で時間が掛かる作業を、新参メーカーが即時対応できるとは考えにくい。

よって、ドイツ鉄道が提示する「今年12月から営業運転への即時導入を希望」という条件は、もしウェストバーンが車両を譲渡できる準備が整った場合、いつでも受け入れができることを示すためのメッセージと考えられる。

中車は西欧に本格進出できるか

ヨーロッパではまだ実績がないCRRC製車両の導入について、現地では肯定的な意見と否定的な意見の双方に割れている。もちろん、どこの国のメーカーであっても最初は同様だが、まったく実績が無いゼロの状態からのスタートには多くの苦労を伴うことが予想される。

いち早くCRRC製車両の導入を決めたチェコのレオ・エクスプレス(写真の車両はスイス・シュタドラー製)。中国製新型車両はどのような評価を受けるか(筆者撮影)

これまで世界中で販売されてきたさまざまな製品がそうであったように、中国製というと安いが低品質というイメージがどうしても付きまとう。だが、鉄道運行事業へ新規参入する民間会社にとって最大の障壁となるのが車両調達だ。多くの会社は中古車を購入して運行しているが、もしCRRCが低廉な価格で新車を提供できれば、ほかにも導入を検討するところが出てくるかもしれない。

西欧へ本格的に進出しようというCRRCが、価格以上に価値のある製品を供給し、そのイメージを払拭することができるのか。そして、そのためにまずウェストバーンとの契約を成功させ、西欧諸国進出への足掛かりを作ることができるのか、この先の動向が注目される。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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