愛称は「あずま」、日立製「英国新幹線」の実力 運行会社の撤退などを乗り越えついに登場

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「あずま」のお披露目列車に乗車したLNERのロビン・ギズビー会長(奥)と日立の川畑淳一事業所長(筆者撮影)

もっとも、揺れはかなり改善されたようで、同乗した地方紙の記者は「従来車両のインターシティーでは、テーブルに置いたコーヒーがこぼれたりしたが、新型車両ではそんなことはなさそうだ」と話していた。

筆者も乗ってみたが、「あまりにも乗り心地が日本的で、イギリスの新しい車両に乗った気がしない」と言えるほど快適だったというのが正直な感想だ。座席は回転せず、一般車両はリクライニングがないという欧州仕様だが、それでも日本の新幹線を知るイギリス人たちは「まるでシンカンセンのようだ」とお世辞抜きで高く評価していた。

過去最大の車両納入契約

イギリスの鉄道ネットワークは約200年前の開業以来、ロンドン首都圏のみならず、国内各地を結ぶべく整備が続けられてきた。

だが、インフラも車両も旧態依然とした設備に手を入れながら使ってきた部分が多く、抜本的な対策が求められていた。1999年秋にはロンドン・パディントン駅近くで列車2本が衝突、多数の死者を伴う大事故が発生。国民の間で鉄道施設や列車の近代化を求める声が高まった。

イギリス運輸省は21世紀に入り、老朽化が進んでいた東海岸本線と西海岸本線の優等列車用車両の更新を決定。「都市間高速鉄道置き換え計画(IEP)」の名で車両メーカー各社からの入札を受けることにした。そこへ手を挙げたのが、新幹線車両の生産で長い経験を持つ日立製作所だった。

同社はIEP車両の納入について、2009年2月に優先交渉権を獲得。その後、政権交代があったことで一時はプロジェクトが暗礁に乗り上げるかにも見えたが、2011年に交渉を再開。最終的に122編成866両の納入が決まった。同時に、27年半にわたる車両メンテナンス事業も受注した。契約総額は1兆円規模に達し、日本企業が海外の鉄道事業で得た契約としては過去最大となる。

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