東急大井町線「Qシート」、改善の余地は大きい 待合室がなく、予約変更は実質不可

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二子玉川で乗車不可、という仕組みが象徴的で、田園都市線の渋谷方面から混雑した電車から逃れ、二子玉川で降りてQシートに乗ろうとしても乗ることはできない。つまり、Qシートは大井町線迂回客を優遇する列車で、田園都市線地下区間の利用者は相手にしない。Qシートの趣旨からして当然だ。これはいいアイデアだと思う。乗客の流れを変えるために、ポスターで呼びかけ、車内や駅でアナウンスしたところで効き目は小さい。サービスのデザインで解決するという考え方は正しい。

しかし、これも実際の運用を見ると「東急ブランド」にとってこれでいいのか、と不安になる。Qシートの車内に専任車掌が2人。指定券の確認と座席の案内役だ。しかし、車掌がもっとも労力を割く場面は「お断り」である。大井町線内の乗車区間では、混雑する車両を避け、明らかに空いているQシート車に乗り込もうとする人がいる。そうしたお客様を断る役目が車掌だ。

東急電鉄って、こんな会社だったっけ?

プラットホームにも2人から数人の案内役がいて、指定券のない乗客をお断りする。丁寧で失礼のない態度だが、乗ろうとした電車に制止された側はいい気分ではなかろう。そもそも、なぜQシート車両のドアは4つとも開くのか。1つだけ開ければ、乗客との攻防戦は1カ所で済む。それを、4つのドアに2人の車掌で、モグラたたきゲームの様相を呈している。

Qシート車両のドア付近に立つ係員(編集部撮影)

Qシートのサービスが浸透すれば、こうした攻防戦も対応人員も減るかもしれない。しかし、それを期待する前に、ドア扱いを1カ所に絞る機能を設置したほうがいいように思う。

私は東急電鉄が好きだ。というより、東急電鉄が故郷だ。五反田駅付近の病院で生まれ、池上線の洗足池駅付近で育ち、中学高校時代は旗の台駅付近に住んだ。大学は長野に行ったけれど、就職してから会社の寮は世田谷線の世田谷駅付近だったし、その後は実家が多摩田園都市に移って、バスと田園都市線で通勤した。フリーランスになってから京急沿線に20年住んだけれど、また実家に戻った。20年前より家も店も増え、バス網も発達して住みやすくなっている。

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