動かない「インフレ予想」の背後に生活不安

日銀はインフレ予想の決定要因にも配慮を

日銀は「インフレ期待(予想)を高める」としているが、むしろ、実際の物価動向と人々の実感が乖離してきている(写真:kikuo / PIXTA)

日本銀行が4月26日に公表した展望レポートには、先行きの物価動向の展望について、これまでと同様に「『適合的な期待形成』の面では、現実の物価上昇率の高まりが予想物価上昇率を押し上げていくと期待される」と記されている。

2013年4月の異次元緩和スタート直後の日銀は、中央銀行が物価安定目標を掲げることで「フォワードルッキングな期待形成」がされる、という議論を前面に押し出していた。

だが、インフレ目標の達成が先送りされる中で、「予想物価上昇率は実際の物価上昇率の影響を受ける」という「適合的な期待形成」の議論を持ち出して、期待インフレ率の上昇には時間がかかるというロジックを展開するようになった。需給ギャップがプラスの状態を維持することで実際のインフレ率を上昇させ、人々のインフレ予想も「適合的に(その影響を受けて)引き上がる」ことを待つ必要があるというスタンスである。

この連載の過去記事はこちら

日銀が定義する需給ギャップがプラスの(需要が供給を上回る)状態にあっても明確にインフレ率が上昇してこないことも問題だが、そもそも適合的な期待形成によって人々のインフレ予想が引き上がるのかどうかにも疑問が残る。

動かない人々のインフレ予想

例えば、人々のインフレ予想を調査している日銀の「生活意識に関するアンケート調査」において「これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うか」という質問に対する回答の平均値と実際のインフレ率(消費者物価指数〈総合〉の前年同月比)を比較すると、最近の両者の関係は弱くなっていることがわかる。

①リーマンショック前(2004年3月~07年12月)、②リーマンショック前後(2008年3月~12年9月)、③アベノミクス開始以降(2012年12月~19年3月)の関係を比較すると、明らかにアベノミクス開始以降に実際のインフレ率の動きとインフレ予想の連動性は弱くなっている。これではいつまで待っていても「適合的な期待形成」によってインフレ予想が高くなることはなさそうにみえる。

次ページそもそもインフレ率の変化を感じない
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 井手隊長のラーメン見聞録
  • 映画界のキーパーソンに直撃
  • トクを積む習慣
  • iPhoneの裏技
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
中国を知り尽くす異能の外交<br>官 垂秀夫 新中国大使

中国に幅広い人脈を持ち、アグレッシブな仕事ぶりで知られてきた垂秀夫・在中国大使。世界情勢が激動する中で国力差が開く日中関係をどう舵取りするのでしょうか。中国が最も恐れる男が日中関係のリアリズムを語ります。

東洋経済education×ICT