マツダが、あえて「MT車」を充実させる理由 5月下旬に発表される「MAZDA3」でもMTを採用

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昨今はペダルの踏み間違いなどに基づく深刻な交通事故が増えている。これを防ぐためにMTを推奨するのは非現実的だが、トラブルに陥ったときにATレバーを真っ先にNレンジに入れるなど、駆動をカットすることは心がけておきたい。

自分の運転操作に対して、つねに疑いを持つことも大切だ。例えば駐車場から発進するとき、最初のタイヤのひと転がりは、ATのクリーピングで徐行する。操作ミスでギヤがR(リバース/後退)レンジに入っていれば、このときに気づくからだ。交差点で信号が青に変わって発進するときも、最初はアクセルペダルを緩く踏み、次に踏み増す。

公共交通機関の運転者は「指差し確認」を行う。確認作業そのものにも意味があるが、自分の操作につねに疑いを持ち、違和感を探る気持ちも高まる。これが安全性を向上させる。

古臭いMTに新たな効用の可能性

操作ミスに関していえば、MTでクラッチペダルをいきなりつなぐと、強いショックとともにエンジンが停止したり、ギクシャクと前後に揺れながら発進する。MTでは急発進させるとしても、クラッチペダルとアクセルペダルをデリケートに操作することが必要で、乱暴な操作では急発進すらできない。これが駆動を自分でコントロールすることでもある。

マツダではこの「手と両足を連係させるMTの操作に、認知症を防ぐ効果があるのではないか」という趣旨の研究を行っている。ハンドル操作に集中できる快適なATは、今後も主力であり続けるが、古臭いとされるMTに新たな効用が開ける可能性もある。

頻発する人身事故の防止には、高齢者を中心に補助金などの交付も視野に入れ、緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を普及させるなど積極的な対策が急務だ。

それと同時に、少しでも長く安全な運転を続けられるドライバーのトレーニングも求められる。この対策の1つに、MTが果たす役割があるかも知れない。販売比率は2%のマイナーな変速機ではあるが、注目すべき点が多い。

AT限定免許ではない読者諸兄は、機会があったらMTを運転してみるといいだろう。ギヤチェンジの楽しさを再発見するかもしれない。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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