マツダが、あえて「MT車」を充実させる理由

5月下旬に発表される「MAZDA3」でもMTを採用

感じ方はドライバーによって異なるが、ヒール&トゥの操作で速度とエンジン回転がピタリと合い、滑らかにシフトダウンできたときは気持ちがいい。カーブをキレイに曲がれたときと同様だ。上手に操作できると、極めて軽い力でシフトレバーを扱える。回転合わせを緻密に行えば、クラッチペダルを踏まずに、シフトチェンジできることもある。

一部のMT搭載車が注目された背景には、AT限定免許まで創設されてAT比率が増え、MT搭載車が激減したこともあるだろう。確かにMTのニーズは下がったが、それ以上に車種が減ったから、逆に希少性が生じた。

家族を乗せられるセダンやハッチバックを選びながら、日常的な移動の中でギヤチェンジを楽しみたいユーザーもいる。そういった人たちが、CX-5やアテンザのようなマツダ車、シビックやスイフトスポーツを購入して、ちょっとしたムーブメントになった。

マツダの販売店からは「6速MTの設定により、他メーカーからマツダ車に乗り替えるクルマ好きのお客様が増えた」という声が聞かれる。6速MTだけで購入に導くことはできないが、背中を押す付加価値にはなるだろう。

MTは走りのイメージを高める

またホンダの販売店では「シビックが6速MTを設定したことで、スポーティーなクルマであることが表現された。ATだけでは普通のハッチバックだが、MTを選べると、タイプRと同じように走りにこだわったクルマであることがわかる」とコメントした。以前のMTは当たり前の存在だったが、少数派の今では、走りのイメージを高めるアイテムになっている。

別の観点では、MTにはクラッチペダルを踏むことで、駆動をカットできる安心感がある。何らかのトラブルによってアクセルペダルが戻らない(スロットルが閉じない)状態になったとき、MTであれば、クラッチを踏むだけで事故を回避できる。

昔話になるが、1990年頃までの右ハンドルの輸入車では、アクセルペダルが戻らなくなるトラブルが時々発生した。当時の欧州車は右ハンドルの設計と開発に不慣れで、アクセルワイヤーが引っかかったりしたからだ。

スロットルが開いた状態でクラッチペダルを踏むと故障の原因になるが、駆動力はカットできるから、危険な状態に陥るのは避けられる。クラッチペダルを踏みながら、右足の靴底でアクセルペダルを引っかくと、戻ることが多かった。

そしてMTの運転に慣れていると、同様のトラブルがATで発生しても落ち着いて対処できる。左足でブレーキペダルを踏みながら、ATレバーをN(ニュートラル)レンジに入れ、同じように右足でアクセルペダルを引っかく。

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