「空き家数」の増加にブレーキがかかった不可解 5年前比で空き家率は0.1%増にとどまった

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住宅着工戸数と住宅滅失戸数がわかれば、おおよその増加分を計算できる。総務省が5年ごとに調査しなくても、前回の調査結果に増加分を足せば、総住宅戸数を算出できるはずである。

2014年から2018年の5年間(暦年ベース)の新設住宅着工戸数は約467万戸(年平均93万戸)だった。同じ期間に災害または除却による住宅滅失戸数は約56万戸(同11万戸)だった。差し引き増加分は411万戸である。

今回の住宅・土地統計調査では、総住宅数は6242万戸となり、5年前に比べて3.0%増、179万戸の増加だった。実に「411万戸-179万戸=232万戸」もの違いが生じている。いくら調査方法が違っていると言っても、差異が大きすぎて、「誤差の範囲」とは言えないレベルである。

その理由について統計担当者や業界関係者から納得できる説明を聞いたことはない。では、5年間で「232万戸」もの住宅はどこに消えたのだろうか。

最大の原因は精度の問題

最大の原因は、住宅滅失統計調査の精度の問題だろう。法律で建築物除却届の提出は義務付けられているが、届け出数が実際の除却戸数よりも少ない可能性がある。不動産の滅失登記を行わないと、同じ敷地に新築した建物を登記できない可能性があるが、除却届を出さない場合に「土地を売れない」「新築工事ができない」などの不都合が生じるわけではないからだ。

全国解体工事業団体連合会の幹部に話を聞くと「滅失統計調査の数字と、実際に除却している戸数の数字にはかなりの違いがある」と認めている。「全解工連で実際の除却戸数を把握しているわけではないのでわからないが、統計数字の2倍は壊している」というのだ。

解体工事業は、以前は業種区分で「とび・土工工事業」の中に含まれていた。今後は解体需要の増加が見込まれるとして、2016年6月の建設業法改正で、家屋の解体工事などを行う「解体工事業」が分離・独立して29番目の業種区分になったばかりだ。

国交省が専門工事別に建設工事の完成工事高を公表する「建設工事施工統計調査報告」では、「はつり・解体工事」の区分で完工高を調査してきた。それによると、東日本大震災を含む2009~2013年度の年平均完工高3248億円に対して、2014年度から最新の2017年度の年平均完工高は4858億円と1.5倍に増えた。

ところが、住宅滅失戸数は2009~2013年の5年間で61万戸だったのに対して、2014~2018年は56万戸に減少した。建設リサイクル法で床面積80平方メートル以上の建築物の解体工事は事前届け出が義務付けられているはずだが、2016年度から届出件数が公表されなくなった。既存の統計からは解体工事の実態を読み取りにくくなっている。

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