「アドテクvs.広告マン」の仁義なき戦い テクノロジーの進化で変化を迫られる広告代理店

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運用では「車好きなら年収が高い男性が多いのではないか」など、広告を届けたい相手を想像しながらさまざまな角度からデータ分析し、それを基に広告予算の使い方を考えます。こうした数字に基づいたトライ&エラーを繰り返すと劇的な効果が現れます。今までの広告では、全体の掲載が終わった1カ月後くらいにレポートをまとめ、効果の結果報告をするだけでした。しかし、運用は違います。日々状況をチェックし、広告の予算の割り振りを毎日変えていくのです。

米国の広告代理店では、こうした流れを受けて進化しています。最近では顧客の広告予算を金融資産に見立て、広告代理店が資産運用会社化しているのです。「あなたの会社ではこういうふうに運用するといいですよ」と顧客の広告予算に応じた掲載ポートフォリオを作成しています。さまざまな取引データを蓄積し、過去の同業他社の類似キャンペーンなども照らし合わせ、その中から最適なプランを提案するのです。ここでものを言うのはデータ量。データを蓄積するだけなら広告主だけでもできますが、複数の会社と取引を重ねる代理店のほうに優位性があります。このように運用は広告代理店の腕の見せどころのはずなのですが、日本の代理店ではまだこれからですね。

――効果的な運用ができない代理店は消えていく、ということでしょうか?

消えるということはないはずです。しかし、広告マンに求められる役割やスキルは間違いなく変わるでしょう。データを運用できる数字耐性の力に加え、取得したデータを基に仮説や戦略を構築する能力が求められます。これは結局、“人間力”の勝負です。誰にどんな広告を作るか設計するために、「こんなふうに言われたら興味を持つだろう」といった感覚が重要ですから。人間観察が得意だったり、いい意味でよく遊び、時流をとらえている人が向いています。広告主が何をしたいのかということと徹底的に向き合いながら戦略を練るのです。

このように、異なるスキルを持つ運用チームと戦略チームが一緒になって提案をしていくのが、今後のWeb広告の主流になるのではないでしょうか。アドテクの進化によって、広告商品をただ知っていればよいという時代は終わりました。しかし、データを味方にし、広告“商品”ではなく広告“主”をベースに考え方をシフトすれば、代理店も新たな道が見えるのではないかと考えています。

(撮影:山内 信也)

早川 くらら ビルコム コンサルティングDiv General Manager

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はやかわ くらら

2005 年 ビルコム株式会社入社。新規事業担当、採用担当、アライアンス担当、営業担当を経て、コンサルティングDivのGeneral Managerに就任。協和発酵キリン、クラシエフーズ、ブリヂストンなど国内外大手クライアントを持つ部署全体を統括し、戦略的PRプランニングなどに携わる。

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