進む「東証外し」 市場外取引の衝撃



過去、大証・日経は失敗 時代の変化が後押し

 東証には毎日膨大な売買注文が集まる。しかし、「大量の売買をしようとすると、自ら出した注文で株価を上げてしまったり、下げてしまったりする」(リクイドネット証券の服部英輔マネージングディレクター)。大口注文がほかの投資家に対して思惑を与えてしまい、それによって株価が上下してしまうのだ。このため取引所では一定価格で大量の株を売買するのが難しい。

 この問題は、取引コストにも影響する。近年、機関投資家は大口注文を小口に分けて、これを回避しようと努めている。それに対してリクイドネットのような市場外取引は、特定投資家による閉鎖されたネットワークであるがゆえに、情報による株価攪乱は起きにくい。そのため投資家は希望の価格と数量で取引を成立させやすい。東証にも「立会外取引」(ToSTNeT)と呼ぶ、市場外取引に近いサービスはある。ただ、「時間も参加者も限られ、使い勝手はよくない」と関係者は話す。

 機関投資家には昔に比べ巨額資金が集まるようになった。それを効率よく運用するには「最大公約数的なサービスの東証では、すべてのニーズに応え切れない」と大崎氏は指摘する。実はそうした声に対応する試みは数年前に日本でもあった。00年末に大阪証券取引所が日本経済新聞社と組み、「オプティマーク市場」と呼ぶ機関投資家向け電子取引サービスを展開したのだ。ただ、当時、日経グループでこれに携わった早稲田大学大学院の宇野淳教授によれば「日本の機関投資家は、電子取引や取引コストへの意識が高くなく、ビジネスは惨憺(さんたん)たる結果だった」という。事業開始から約半年で撤退した。

 時代は移り、「日本の機関投資家の意識も当時よりはずいぶん変わった」(宇野氏)。世界28市場で約470社の機関投資家にサービス提供するリクイドネットにとっては、日本株市場で売買代金の7割を占める外国人投資家の有力顧客をすでに押さえている優位性もある。「ダークプールは公平性や透明性に欠ける」(東証幹部)のは確か。だが、欧米では「市場外取引の活況が取引所の売買を増やすことにつながっている」(大崎氏)という側面もある。新鋭外資系証券が日本の株式市場にどのような「インパクト」を与えるのか、大いに注目すべきだ。
(週刊東洋経済:武政秀明)

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