夢のセカンドハウスは老後破綻を招きかねない 長く持つほど貧乏になる「負動産」の可能性も
Aさんが受け取った、50歳以上に送られるねんきん定期便には「現時点の収入が60歳まで続く」と想定した年金額が記載されています。もしも、今後年収が下がると、受け取る老齢厚生年金額が減る可能性があるのです。
というのも、厚生年金は給与や賞与の額に応じて保険料が決まります。負担する保険料が多ければ、その分将来受け取る老齢厚生年金の額も多くなります。保険料は1等級から31等級に区分されており、上限の31等級では標準報酬月額62万円(報酬月額60万5000円〜)です(報酬月額は基本給以外の残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)つまり、報酬月額60万5000円×12カ月分=726万円以上になると厚生年金保険料は増えませんが、老後に受け取る老齢厚生年金受給額も頭打ちということです。賞与については別途計算ルールがありますが、Aさんは給与のみのためここでの説明は割愛します。
年収1200万円(給与のみ)のAさんの標準報酬月額は上限の31等級です。役職定年を迎えて、例えば57歳から3割減の840万円になったとしても31等級のままです。ただし、726万円未満になった場合には、年金見込額は減ることになります。
ではAさん夫婦の年金見込み額は「標準」と比べて多いのでしょうか?厚生労働省によると、「モデル世帯」の公的年金(厚生年金)の給付水準は2019年度で月額22万1504 円。モデル世帯とは、夫が平均的な収入(平均標準報酬〈賞与含む月額換算〉42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦の世帯です。Aさん夫婦の見込み額はモデル世帯を約3万円上回ります。一方で、年金受給の見通しでは「現役世代の収入の5割」をモデルとしていますが、Aさん夫婦は3割です。現役世代の収入が高い人ほど割を食うといえます。逆説的ですが、収入が高い人ほど十分な老後の備えをしておかないと、家計破綻のリスクがあるのです。現役時代と同様のお金の使い方、生活レベルは望めません。Aさん夫婦の場合、90歳まで生きるとすると、年金以外に毎月約16万円、累計で約4800万円が最低限必要になります。
イケイケどんどんの「アラフィフ世代」が危ない
Aさん夫婦は、老後の生活レベルをダウンサイズするか、老後の備えに励むか、戦略を立てる必要があります。とはいえ、「自分たちの立ち位置が分かって、スッキリした」とAさん。「あのままセカンドハウスを購入していたら毎月の維持費を払い続けることになり、老後破綻していたかもしれませんね」と胸をなで下ろしました。
Aさんのようにバブル景気の時代を経験したアラフィフ世代は、車や家など、欲しいと思ったら所有することを考える傾向があります。しかし、こと不動産に関しては、少子高齢化で空き家問題も叫ばれている現状ですから、精査せずに購入を決めるのはオススメできません。生き方や価値観は人それぞれ、老後の田舎リゾート暮らしを否定するつもりはありません。でも、購入前に賃貸などでトライアルしてからでも、遅くはないでしょう。
Aさんの後日談ですが、いまは不動産投資を検討されているそうです。お父様が都内にワンルームマンションを所有し、賃貸収入を得ていることから、不動産投資へのハードルは高くはないようです。いろいろな不動産投資セミナーに参加をして、都心の駅近中古ワンルームマンションの購入を考えているとのことです。
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