寂れた「空き家地帯」を激減させた大阪人の意地 300m四方に飲食店など31店が出店

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大阪市城東区蒲生4丁目(通称がもよん)のがもよんにぎわいプロジェクトを牽引する和田欣也氏。公的な補助金は一切もらわず、民間の力だけで町を変えてきた(筆者撮影)

古民家を利用した飲食店やホテルが人気を呼んでいる。だが、たいていの場合、古民家は点として存在しているだけ。ところが大阪市城東区の蒲生4丁目では再生された古民家が面として密集、空き家だらけだった下町が新たな名所となっている。

大阪城の東に位置する城東区のほぼ中央にある蒲生4丁目(通称がもよん)は旧街道沿い、空襲に遭わなかったため、築100年以上はざらな古い住宅が残る人口密集地帯である。といっても風格ある大きな住宅はさほど多くはなく、大半はごく普通の一戸建てや長屋。路地やそれほど幅のない道路に面して木造家屋が並ぶ街並みは、東京でいえば墨田区や足立区、中野区などの、いわゆる木密地域に似た雰囲気がある。

「蔵をイタリアンに」へ猛反発

大阪市は空き家率、空き家戸数ともに政令指定都市の中では日本一だが、そのうちでも空き家が多いのは、戦災で焼けなかった古い木造住宅が残る地域とワンルームの多い地域。がもよんは当然前者で、10年前までは空き家だらけの寂れた地域だった。

それが変わり始めたのは2008年。築120年の米蔵が再生されて以降である。所有者である父親から活用を任された息子は当初、そば屋にするつもりで3年間、テナントを募集していたが、反応はゼロ。悩んでいたところにデザイン性の高い、長屋の耐震リフォームを手がけて話題になっていた和田欣也氏と知り合う。

和田氏が手がける建物の1つ。外観だけ見ると空き家になっているようだが、耐震・断熱改修がされており、住戸間の仕切りを取っ払った広い空間には環境に配慮したプロダクトデザインの会社proefがオフィス、工房を構えている(筆者撮影)

蔵だから和風の商売というのでは面白くないと和田氏が提案したのはイタリアン。ところが周囲は大反対だった。「ジャージを着た兄ちゃんがつっかけサンダルで歩いている、飲食店に予約を取る習慣がない町でそんな店が成功するわけがない」というのである。

ことに反対したのは所有者だ。古いモノには価値があると考える息子とは異なり、「古い建物なぞさっさと潰して駐車場にするなり、マンションにするなりしたら簡単だろう。大体、和田とは何者だ?」と言い出したのである。

だが、提案した以上、引くに引けない。和田氏は失敗したらギャラはいらん、儲かってからくれと大見栄を切った。所有者の息子も失敗したら2年間は給料不要と同調してくれた。

「そこまで言うなら」と始まったイタリアンレストランは、蔵を改修した、当時としては珍しい店の作りと和田氏が見つけてきたシェフの腕前などから人気店となり、それが呼び水となってこの10余年で蒲生4丁目駅周辺の300m四方には飲食を中心に31店舗が出店。市の観光案内にも登場するまでになった。

最初に手がけた、米蔵を利用したイタリアンレストラン「リストランテ イル コンティヌオ」。天井が低かったため、地面を掘り下げてバランスをとった(筆者撮影)
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