「春の引っ越し」で業界大混乱!壮絶な舞台裏 不動産管理など関連業者も超多忙だった

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また、山本さんは「引っ越し屋さんの手配を頼まれることもありますが、入居者の希望日に実施できることは相当まれ。そもそも、修繕工事も受けてくれる業者を見つけるのすら、とても大変な状況なんですよ」とも話してくれた。

当然、業者から断られるケースもある。というのも、新築住宅(戸建て・賃貸・分譲マンション)も3月末の入居に向け、一斉に工事を行うからだ。「新築の場合、クロスを貼る量が多く施工単価も高いため、業者はどうしてもそちらを優先しがちになってしまいます」。

時には、彼自身がクロスを剥がす作業を行うケースもあった。「23時くらいまで作業したことも。そうしないと、引っ越しまでに間に合わないからです。しかたなく上下セットの作業着を新たに購入したくらいです」。クロスそのものの価格も上がっているという。

3月30日、31日は土日で入居希望が殺到

とくに3月30日、31日は土日だったこともあり、入居希望が殺到。山本さんは自宅に帰ることなく対応した。「先輩社員にはこの2日間で10件の立ち会い業務をこなしていました。入居者の入居時間をずらしてもらうなどして、奇跡的に業務をこなせた」という。

山本さんは昨年2月にマンション販売業者から転職したばかり。ただ、あまりの忙しさから疲弊が募り、「正直、また転職したい気分になっています」と力なく話していた。

もう1人、この春の引っ越し事情について話してくれた人がいる。埼玉県内で「何でも屋」を経営し、物件の室内クリーニングと引っ越し、廃品回収などに手広く携わる藤田篤司さん(仮名、45歳)だ。 今年は目が回るほどの忙しさだったという。

「普段、引っ越しがらみの業務依頼は1日に2~3件程度ですが、3月は10件超に跳ね上がったことも。基本、依頼は断らないようにしていますが、さすがに今回は何件もお断りをせざるをえませんでした」と話す。

引っ越しに関わる事業者は、引っ越し業者や不動産事業者、施工業者のほかにもさまざまな事業者がいる。主にクリーニングを担当する藤田さんのような立場の人も同様だが、彼が直面していることは要するに引っ越し関連業界全体の人手不足が、抜き差しならない状況にあることを表している。

当然、クリーニング費用も高騰気味だ。「通常の2倍の金額を払うから何とか仕事を受けてくれないか、という切迫した依頼もありました。もっともそれは、深夜に仕事をしてくれというものでしたが」と藤田さん。

そして、そんな状況の中、「物件によっては修繕の施工品質がやたらに低いケースが増えているように感じられます」と話す。実はこの話は賃貸管理会社の山本さんも指摘していたことである。この話からは、繁忙と人手不足で施工ミスや手抜きが増えていることがうかがえる。

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