「春の引っ越し」で業界大混乱!壮絶な舞台裏 不動産管理など関連業者も超多忙だった

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さて、本丸である引っ越し事業者の状況はどうなっているのだろうか。引っ越し事業者も加盟する公益社団法人・全日本トラック協会によると、「加盟各社からは取扱件数が前年に比べ1~5%の幅で増加したなどの声が聞かれるが、少なくとも減ったという報告はない」とのことだ。

とくに問題となっていたのは、昨年8月に発覚した大手引っ越し業者・ヤマトホームコンビニエンスの過大請求による引っ越し業務の停止。その影響で、単身者向けの引っ越し作業がとくに増えたとする事業者もあったという。

「レオパレス21の問題の影響(不良施工の発覚により、多くの入居者に転居を求めた)を指摘する声は聞かれない」(全日本トラック協会)という。しかし、このことについてある大手引っ越し事業者の関係者は、次のように話している。

「発表が行われた時点(今年2月8日)で、3月末までの引っ越しの枠はすでに埋まりつつある状況だった。そのため、入居者はもちろん、引っ越し業者も対応ができなかったためではないか」と言う。要は、レオパレス21の目論み通りには事が運ばなかったということではないか。

人材獲得競争が激化

余談だが、同協会では5年前から「引越繁忙期(3月、4月)~分散引越にご協力をお願いします~」というアナウンスを発表し、危機感をあらわにしていた。要するに引っ越し業界の繁忙ぶりは、この春以前からのことなのである。

それを象徴的に表すのが筆者の知り合いの若い編集者の事例だ。昨年11月に引っ越しをしたそうだが、「どの業者も少しでも価格交渉しようものなら、『違うところで頼んでください』と電話を切られてしまいました」と話していた。

その背景には、引っ越し業界がほかの物流事業者との間でトラックドライバーなどの人材獲得競争に巻き込まれていることがある。例えば、ネット通販の拡大、働き方改革による労働時間の短縮などが、その要因となっている。

このことから、当然ながら私たち消費者は早い段階から日にちを確定して備えるなどの対策を講じたほうが賢明だ。費用も高騰しているから、家計を守るためにも大切になる。そして、それは企業経営にも言えることかもしれない。

筆者が普段取材している、ある全国展開しているハウスメーカーによると、「転勤して転居先が決まっても、引っ越しがうまくいかず、しばらくホテル住まいというケースもある」という話も聞かれた。転勤の費用を企業が負担するケースが多いわけだが、このような状況が続けば、人事異動が企業収益を圧迫することも否定できない。

ところで、筆者は戸建てやマンションを買い急ぐ人たちに対して、「気軽に転居できるから賃貸住宅でもいいんじゃない」と諭してきた。だが、そんなことを気軽に言える状況ではなくなったと考えている。時代が変わったといえばそれまでだが、何とも気が重い状況になってしまったものだ。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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