「2階建て」新幹線E4系、引退後の輸送力は十分か 朝ラッシュ時の東京方面についてデータ検証

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先ほど挙げた新幹線通勤列車のうち、「Max」と付く6本がE4系を使用した列車で、うち5本が16両編成で運転されている。

朝のラッシュ時こそ輸送需要は大きいものの、上越新幹線の輸送人員そのものは1日平均11万9542人(2017年度)で、東海道新幹線の46万5682人はもちろん、東北新幹線の25万2373人と比べてもかなり少ない。にもかかわらず、巨大な輸送力をもつE4系を用いている理由は、東北新幹線の東京―大宮間が多数の列車で混み合っているからだ。

東北・上越・北陸・北海道・山形・秋田の各新幹線の列車が乗り入れるこの区間では、朝8時台に東京方面に向かう営業列車が15本運転されていて、これ以上列車を増発することは難しい。列車の本数を増やせないのであれば1列車当たりの輸送力を上げる必要があるとしてE4系が開発されたのだ。

通勤・通学の希望の足として誕生したE4系も曲がり角に差しかかった。車内に階段が設置されているためにバリアフリー対応が難しく、加えて途中駅では旅客の乗降に時間がかかり、皮肉にも混雑時に遅延が生じやすくなってしまう。それに前方投影面積が大きいために空気抵抗を受けやすく、最高速度は時速240kmと、ほかの車両が時速260km以上で走行できる点を考えると遅い。

E4系引退後はどうなる?

車両の老朽化も伴い、JR東日本はE4系を置き換えることとなり、つい先日の2019年3月16日のダイヤ改正で一部の列車から撤退を始めた。置き換えは2020年度中に完了するそうで、2021年春のダイヤ改正までには全車両が姿を消すであろう。

E4系の撤退に際し、JR東日本は新幹線通勤列車の輸送力を維持するための方策を練らなくてはならない。何しろ、一度に普通車だけで1526人を載せる能力をE4系は持っているのだ。平屋建ての通常の構造の車両の輸送力ではE4系にかなわないのであれば、不可能に近い列車の増発も含めてさまざまな方策を講じる必要がある。

今後の動向を探る前にまず、高崎駅から東京駅までの間で新幹線を通勤・通学の足として利用している人たちの数や推移を調べておこう。上越新幹線の新幹線通勤列車には高崎駅をはじめ、本庄早稲田駅、熊谷駅からも乗車していると考えられる。国勢調査を基にこれら3駅の沿線各市から東京都への通勤・通学者数の推移をまとめてみると、2005年には1万4195人であったところ、2015年には1万5724人へと増加していた。

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