映画「長いお別れ」は家族を描ききった作品だ

多くの名優が出演を望む中野量太監督の力量

そして本作の脚本も俳優陣の心を動かしたという。名優・山﨑努も「中野監督のことは、前作や脚本に触れるにあたり、大変な才能だと思っておりました。実際に現場で一緒に仕事をしても、見事な演出で感服しました」と告白する。

長女・麻里役に竹内結子(左)、次女・芙美役に蒼井優(中央)、母・曜子役の松原智恵子(右)。中野監督に惹かれて多くの名優が集まる ©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋

それだけに多くの名優たちが集まる結果となった。次女・芙美役に蒼井優。「何者でもない彼女が何者かになろうとあがいていく」30代女性が抱える焦燥を演じられる女優として中野監督が熱望したという。

そして長女・麻里役に竹内結子。「独特の光を放ち、さまざまな問題を抱え、右往左往しながらも、それを嫌みなく魅力的に演じられる役者」と考えた製作陣が彼女にオファー。さらに母・曜子役の松原智恵子がかもし出すチャーミングな魅力とともに、なんとも魅力的な家族の姿が息づいている。

中野監督はこれまでも、まったくの他人である俳優たちをいかにして“家族に見える”ようにまとめ上げるかに苦心してきた。例えば『湯を沸かすほどの熱い愛』では、「家族に見えるようになってほしい」という中野監督の思いから、宮沢りえ、杉咲花、そして子役の伊東蒼たちにメールのやりとりをするよう提案。多忙な女優陣ではあったが、1日1回は写真を送り合ってコミュニケーションをとって互いの距離を近づけた。

「ひとつの家族」を作り上げるのために苦心

『チチを撮りに』でも、出演者である渡辺真起子、柳英里紗、松原菜野花らに「家族に見せるため」極力コミュニケーションをとるような雰囲気作りに尽力した。そしてそのスタイルは本作でも変わらなかったようだ。

「家族を演じるうえでは家族になる時間が必要」と、キャストを全員集めて70歳の誕生日会という設定のリハーサルを行ったという ©2019『長いお別れ』製作委員会 ©中島京子/文藝春秋

「家族を演じるうえでは、家族になる時間が必要」と語る中野監督。本作では、クランクイン前に、孫も含む家族のキャストを全員集めて、過去に行われた父の70歳の誕生日会という設定のリハーサルを行った。スタジオには誕生日ケーキや食事などが用意されていたという。

そこでは脚本を読み合わせるのではなく、それぞれが自分の役になりきって、家族の食卓を囲むことでそれぞれの関係性を構築することができたという。長女役の竹内結子も「クランクインの前に監督が、ひとつの家族として始められるように、東家のリハーサル時間を設けてくださったので、安心して撮影に入ることができました」と証言している。そうした一つひとつの積み重ねが、本作を非常に豊かなものにしている。

(文中一部敬称略)

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • ミセス・パンプキンの人生相談室
  • iPhoneの裏技
  • 岐路に立つ日本の財政
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
沸騰! 再開発バトル<br>「不動産好況」はいつまで続く

東京をはじめ、地方都市でも活況が続く都市再開発。人口減少時代に過剰感はないのか。ベンチャーの聖地を争う東急・三井両不動産、再開発で「浮かんだ街・沈んだ街」、制度を巧みに使う地上げ最新手法など、多方面から街の表と裏の顔を探る。