ドラッグの王者復権へ! マツキヨが繰り出す捨て身の挽回策《特集・流通大乱》
王者はようやく目覚めたのか--。ドラッグストアの代名詞ともいえるマツモトキヨシが「復権」に向けて動き出した。
「業界を取り巻く環境が厳しくなる中で、生き残るには専門性を打ち出すしかない」。08年10月末、調剤薬局大手の日本調剤との提携協議開始会見で、マツモトキヨシの松本南海雄社長は淡々と語った。化粧品等を安売りする一方、高単価の大衆薬で稼ぐモデルで成長してきた同社が舵を切ったのだ。
ドラッグストア業界は、今や大手、中小入り乱れての再編真っただ中だ。すでに都市部はオーバーストア状態。追い打ちをかけるのが、6月の改正薬事法だ。従来は大衆薬販売に薬剤師が必要だったが、改正後には新資格「登録販売者」を介してほとんどの大衆薬を販売できるようになるため、コンビニなど異業種参入でさらなる競争激化は必至なのだ。
マツキヨにも再編の荒波は容赦なく押し寄せている。地盤の関東圏では店舗過剰状態で、業界首位とはいえ、シェアは1割程度。FC化などを含めてグループは約1000店舗まで膨れたが、不採算店の閉鎖も多く、店舗数も伸び悩み状態が続く。一方、ライバル各社も中小買収を繰り広げ規模を拡大中。異業種と差別化すべく、調剤や化粧品等の対面事業強化にも力を入れるなど、生き残り策を次々と打ち出している。そこへ、異業種が大衆薬安売りを掲げて参入すれば、マツキヨの地位は一層危うくなりかねない。
調剤併設店を急拡大へ 顧客の薬歴管理が目標
ドラッグ業界では最近「健康と美」が旬のキーワードだが、マツキヨもそこへ活路を見いだそうとしている。その取っかかりとなるのが日本調剤との提携だ。
国が医薬分業を推し進める中で、調剤は今後市場拡大が見込まれるが、現在マツキヨの調剤併設店舗数は全体の1割程度。日本調剤との提携を通じ、今春には合弁を設立し薬剤師を確保、早期に2割突破を急ぐ。
高い調剤併設率を誇るスギホールディングスなどに比べて、マツキヨはかなりの後発となるが、松本社長は「今から始めてもまったく遅くない」と言い切る。「これまでドミナント戦略中心でやってきたので調剤まで手が回らなかったが、薬剤師さえ確保できれば併設型を増やすのは難しくない。地域で圧倒的な存在になっていれば、顧客は調剤でもマツキヨを選ぶようになる」。
将来的に目指すのは、顧客の薬歴を管理し、地域のどのマツキヨに行っても薬剤師が薬歴に基づいて的確にアドバイスできるような体制だ。
一方で、他社が慎重な中、登録販売者を活用した深夜営業拡大にも意欲を見せる。これまでは大衆薬販売に薬剤師が必要だったため、人件費がネックとなっていたが、改正後には薬剤師より人件費の安い資格取得者だけで店舗運営ができるようになる。現在、深夜営業は65店舗にとどまるが、「午後10時以降の需要はバカにならない。初年度で400店舗程度に増やしたい」(松本社長)と言う。