鉄道の自動化、運転士より先に「車掌」が消える 運転の負担が減る分、車掌の仕事を肩代わり

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昨年暮れから今年初めにかけて、JR山手線で終電後の時間帯にATOを使った試験走行が行われた。

山手線の自動運転試験。運転士は左側にあるマスコンに手を触れていない(撮影:尾形文繁)

ATOによる走行といっても運転席には運転士が座っており、無人運転ではない。だが運転士の左手を見ると、速度を調節する「マスコン」に触れていない。運転士は発車ボタンを押した後は、非常時を除き駅に到着するまで運転操作はしない。

通常走行より加減速が多い印象を受けたが、「現在はまだ目標速度に合わせるために、装置が加減速しすぎる傾向がある。今後は無駄な加減速がないように、装置の調整を行う」とJR東日本の担当者は語った。乗客が自動運転だと感じないレベルに引き上げるのが目標だ。将来、山手線において無人運転が実現しても不思議はないと思わせる出来事だった。

「無人」はなかなか難しい

しかし、鉄道の有人運転から無人運転への切り替えは簡単ではない。ATOは線路内への人の侵入、線路沿いの火災といった非常事態の検知は不得手である。このようなトラブルが起きた場合は、運転士による対応が求められる。

開業時から無人自動運転の東京都交通局「日暮里・舎人ライナー」。全線が高架だ(写真:うげい/PIXTA)

国の基準によると無人運転を行う鉄道は、踏切がない高架構造を設け、しかも全駅にホームドアを設置するなどの要件を満たす必要がある。踏切を撤去して立体交差にするには巨額の工事費用がかかるということもあり、ATOを搭載した列車による無人運転は、ゆりかもめなど無人運転を前提として建設された数例にとどまる。

一方で、ATOを導入したうえで非常時に備えて運転士が乗車するという例は数多い。首都圏では2008年に東京メトロ丸ノ内線がホームドア設置を機に、ATO運転を開始。それ以外でも都営地下鉄大江戸線やつくばエクスプレスなど、踏切がない地下鉄や高架上を走る列車の多くでATOが導入されている。

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